早く大人になって愛し合いたいと願う子供たち

「ボクも早く大きくなって、パパとママみたいになるんだ」
「私も早く大人になって、パパと結婚するの」

フランスの子供たちのだれもが、パパとママに憧れる。男の子はパパのようになって、大好きなママと結婚したいと願う。女の子はママのようになって、素敵なパパと結婚したいと願う。大きなダブルベッドで、抱き合って眠るパパとママみたいに、自分も早く大人になって、愛し合いたいと願うのである。

フランスの子供に限って、男女の愛の営みを知って生まれてくるわけではない。幼子が男女のセックスの意味など、知るはずもない。

フランスの子供たちは物心がつく以前から、人生で一番大切なものは愛だと断言する大人たちの言葉を、子守唄がわりに聞いて育つ。パパとママが愛し合って自分たちが生まれ、だから美味しいものが食べられ、暖かいベッドにも眠れる。人間はパンのみで生きるにあらず、愛があるから生きていけるのだと、大人たちが幼子相手に唱えるわけではないけれども、日々フランスの子供たちは、人を愛することの大切さを肌で感じて大人になるのである。

まだ、字も読めない子供たちが実に楽しそうにパパとママのことを喋るのを、幼稚園の行き帰りにわが家に遊びにきた子供たちからよく聞いた。幼い彼らが大人の私に話してくれたのではなく、開け放された子供部屋のドアの向こうから聞こえてきた、舌足らずの幼児語で喋る子供たちの話に、私がこっそり聞き耳を立てていたのである。

パパとママは裸でベッドで寝るのよというのを聞いて、3歳やそこらの女の子が両親のセックスシーンを覗いたのかと、最初は耳を疑った私はやがて、彼らが見聞きしている世界こそ、この世の中の無限の幸せを象徴しているということを知った。
幼稚園帰りの娘を遊ばせに連れていった近くの公園の砂場で、または幼稚園の小さな遊び場で、子供たちはよく、同じ話題で幼児語会話の花を咲かせていたものである。

女の子「うちのパパとママね、裸で寝ているのよ」
男の子「ボクのパパとママも、ベッドにいるときは裸だよ」
女の子「いいな、パパとママ。パジャマを着なくてもいいんだもん」
男の子「パパとママは、愛し合っているのだから、パジャマを着ないで裸なんだ」
女の子「いいな、パパとママ。私もパジャマ着たくない」

「パパとママは愛し合っているからベッドに裸で寝てるの」と言う幼い心の中はやがて成長するにつれ、「セックスは恥ずかしい」ではなく「セックスは愛」という意識が芽生えてくるだろう Photo by iSotck
お金がなくても平気なフランス人、お金がなくても不安な日本人』日本が大好きだから、そしてフランスも大好きだから、そのいい所を思う存分真似したら、もっと幸せになるんじゃない? 底抜けに明るく優しく、かつ鋭い視点をもつ吉村葉子さんが20年間のフランス生活を振り返ってまとめたエッセイ集。考え方ひとつで不幸だと思っていたことも幸せになるし、人生は楽しくなる! その中から厳選したエッセイを特別に今後も限定公開予定。お楽しみに!