芸能人の逮捕、続々…ゼロからわかる「薬物依存症」超入門

違法薬物とは何か、なぜ依存するのか
原田 隆之 プロフィール

薬物の作用

これらの薬物は、その作用の違いによって大きく2つに分けることができる。1つは中枢抑制作用であり、もう1つは刺激作用である。俗に「ダウナー」「アッパー」などと呼ぶこともあるが、脳や神経系の働きを抑制するのが「ダウナー」であり、刺激するのが「アッパー」である。

抑制系の薬物を摂取すると、覚醒レベルが下がり、陶酔感を抱き、最後は眠りに落ちる。代表的なものが、ヘロインや大麻である。違法薬物ではないが、アルコールにも抑制作用がある。

刺激系の薬物は、覚醒作用を有し、気持ちがシャッキリとし、ハイな気分になる。文字通り覚せい剤はこのような作用を有する。コカインや少量のアルコール、タバコ(ニコチン)、カフェインも中枢刺激剤である。

また、幻覚作用が前面に出やすい薬物もあり、LSD、大麻、MDMAなどが含まれる。

 

これらの薬物に共通するのは、快感や多幸感をもたらし、依存性があるということである。薬物の摂取によって、ドーパミンという神経伝達物質が多量に分泌され、それが快感を生みだす。それが作用する脳の部位は、大脳辺縁系という「古い脳」にある側坐核を中心とした「報酬系」と呼ばれる神経回路である。

ドーパミンは、薬物を摂取したときだけでなく、われわれが快感を抱いたときは、必ず分泌されている。逆に言うと、ドーパミンが分泌されたから、われわれは主観的体験として快感を抱くのである。たとえば、うれしいことや楽しいことがあったとき、食事、スポーツ、セックスなどの際には、ドーパミンが分泌されている。

しかし、違法薬物、たとえば覚せい剤を摂取したときは、これら自然なドーパミン分泌量と比べると、何十倍から百倍近い量が一気に分泌される。したがって、強烈な快感を抱くが、その後ドーパミンが枯渇してしまうため、大きな不安、抑うつ、焦燥感、イライラ、疲労感などに苛まれることがある。いわゆる禁断症状(離脱症状)である。

このような快と不快の繰り返しによって、脳は不快を避け、快を求めるようになり、薬物使用が反復され、依存症が進行していく。

さらに、同じ薬物を使っても、依存症になりやすい人となりにくい人がいる。たとえば、ちょっとしたことで落ち込んだり不安になったり、ストレスを感じたりしやすい人は、アルコールや薬物の力を借りてそうした不快感情を紛らわせようとしやすい。

さらに、そうした状況にあって、対処スキル(たとえば、友達に相談する、体を動かす、趣味の活動をする)が欠乏している人も、薬物の力にすがろうとして、依存症になりやすいと言われている。遺伝的な基盤があるという知見も報告されている。

(つづく)