農業は100年後にも可能なのか? 気候変動に耐える作物、実現へ!

気候と遺伝子、2つの視点から解説!

それでも、ペクチンの生成プロセスを解明できれば農作物の成長促進技術にも貢献できる──石水教授はそう考えた。

世界初! ペクチン生成酵素の遺伝子発見

「植物にはペクチンの構造を作る酵素があるはず。そこで私たち研究チームはまず、6年をかけて酵素の発見方法を作り出しました。

つぎにペクチン合成量と植物の成長速度との対応関係を調べたところ、下のグラフのようにペクチンを生成する酵素が多いほど植物が早く成長すると分かった。いずれペクチン合成が操作できれば植物の成長速度もコントロールできるようになる可能性があると、この結果には勇気づけられましたね」(石水教授)

緑豆(モヤシ)、エンドウ、アズキでペクチンの生成酵素が最大のアズキは、成長速度も最速
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石水教授がつぎに取り組んだのは、ペクチン生成酵素をコードする遺伝子を突き止めること。シロイヌナズナ(どこでも見かける雑草で、ぺんぺん草の仲間)の2万7000以上の遺伝子について実験し、5年をかけて遺伝子“RRT1“の特定に成功した。

研究のスタートから11年という歳月をかけて、ペクチン生成酵素の遺伝子を世界で初めて見つけ出したのだ。石水教授たちの研究は、英専門誌『Nature Plants』の表紙にもなり、新聞・テレビなど各メディアでも取り上げられた。

「植物は『骨』と『糊』の役目を持つペクチンを持つことで、植物らしい硬さとしなやかさを獲得しています。ペクチンを生成する酵素の遺伝子RRT1の発見によって、その絶妙な植物らしさを説明することができるようになると考えています。

そして、この遺伝子RRT1の有無や数を指標として、成長の早い植物を選び出せるようになると思います。未来農業につながる成果になることを期待しています」(石水教授)

衣食住のすべてを支える、農業。温暖化や人口急増を背景にイノベーションが待ち望まれているが、実は世界有数の研究が国内でも進んでいた。日本発の研究が今後、未来の農業にいかに貢献し、田畑の風景を変えていくのか。100年後の未来に向けて期待は高まる。