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農業は100年後にも可能なのか? 気候変動に耐える作物、実現へ!

気候と遺伝子、2つの視点から解説!
国連によれば、地球人口は2050年に100億人近くに達するという。飢餓リスクを回避するためにも農業の生産性向上は必須だ。

そんな中、古気候学者の中川毅教授(立命館大)は「農業には気候変動に対して脆弱という弱点がある」と警告する。

たしかに気候変動が激しければ安定した収穫が難しくなることはうなずける。しかし、なぜ古気候学者がそのような警告を発するのだろうか? 背景には、古気候学の知見からわかった地球の気候変動史があった。

(立命館大学ポータルサイト「shiRUto」より転載 元記事はこちら

「気候の安定」が農業普及に寄与

福井県若狭町に水月湖という湖がある。

その湖底では数十万年前の太古から、1年に1枚ずつ薄い地層のかたちで、年縞と呼ばれる堆積物が積もり続けてきた。周辺環境にも恵まれ、年縞はかき乱されないまま現代まで残されている。

 

中川教授は年縞に含まれる植物の化石を分析することで、地球における気候史を明らかにしてきた。

「考古学の知見によれば、農耕が世界に普及しはじめたのはおよそ1万1000年前ごろのこと。地球の氷河期が終わって気候が温暖になりだしたタイミングと一致しています」(中川教授)

水月湖の底に堆積している「年縞」の一部。異常気象や天災があった年は、堆積物の色の違いが目視でも判別できる
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そのため農耕の普及要因を、シンプルに“平均気温の上昇”とみなす考えもある。しかしこの考えでは、氷河期でも温暖だった低緯度地域で農耕が普及しなかった理由を説明できない。

年縞を一枚ずつ調べた中川教授は、氷河期と温暖期の大きな違いを温度差のほかにも明らかにした。

「それは一言でいえば気候の安定性です。氷河期では年ごとの気候変動が頻繁で、変動幅も大きく、いわば“暴れる気候”だったことが分かりました。対照的に、温暖期が始まってからの気候はずっと安定しています。

つまり、気候の安定性が農業普及の決定的なファクターだった可能性が高い、ということなのです」(中川教授)

氷河期から現在にいたるまでの水月湖の平均気温グラフ(中川教授ご提供)
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とくに氷河期の最後の数年に注目すると、水月湖では平均気温が2~3℃も跳ね上がっている。この数字は、じつはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が予測している今後100年間の気温上昇幅と近い(最低で2℃前後、最高で4℃前後)。

すなわち、およそ1万2000年前に起きた自然的な「温暖化」と同じ程度の気温上昇が、今後100年間で再び起こりうるということだ。