「偶然」を生かすか殺すか その分け目は「セレンディピティ」にあり

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東京大学CAST プロフィール

信州大学の遠藤守信教授は、炭素繊維の研究をしていましたが、その際に用いる電子基板の掃除に手間がかかるのでいつも苦労していました。そこで何とか掃除で楽をしようとして紙やすりで磨いてみたところ、なんとCNTが大量にできるようになったといいます。

しかしこの方法によって研究を続けていたある日、突然またCNTのできる量が減ってしまいました。

原因は、紙やすりの色にありました。当初使っていた茶色の紙やすりには酸化鉄という物質が、途中で買い替えて使った黒色の紙やすりにはシリコンカーバイドという物質が使われていました。

酸化鉄が使われていた茶色の紙やすり Photo by iStock
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つまり、CNTの大量生成はこの茶色の紙やすりに含まれる酸化鉄が触媒(化学反応を助けるもの)になって起こったものだったというわけです。

このことを応用した生産法(この方法でできたCNTは『遠藤チューブ』と呼ばれています)の発明により、遠藤教授とCNTの発見者である名城大学の飯島澄男教授は将来のノーベル賞候補といわれています。

飯島澄男教授 Photo by Getty Images
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不断の努力が偶然を生む

科学の世界では、彼らのようにセレンディピティを感じさせる大発見の例が多く語られています。では、偉大な科学者とはたまたま成功したラッキーな人たちなのでしょうか? 

そうではありません。たしかにきっかけはふとした偶然かもしれません。しかし普通の人は、その発見をみすみす見逃してしまうことがほとんどです。

偶然を「発明」へとつなげるためには、科学に対する好奇心や探求心、経験に基づく知識や知恵、洞察力や思考の柔軟性の積み重ねによる“アンテナ”に捕まえられなければなりません。ドイツの文豪ゲーテも次のような言葉を残しています。 

──発見には幸運が、そして発明には知性が不可欠である。 

ゲーテ Photo by Getty Images
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セレンディピティの本質は、発見からひらめきを生む“アンテナ”にあるのかもしれませんね。