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「偶然」を生かすか殺すか その分け目は「セレンディピティ」にあり

宇宙エレベーターだって作れちゃう!?
「セレンディピティ」という言葉をご存知でしょうか? これは、何かを探しているときに、探しているものとは異なる価値あるものを偶然見つける能力を指します。

セレンディピティによる産物は、私たちの生活のいたるところに潜んでいます。新シリーズ「現役東大生のサイエンス入門」第1回は、その一例である「カーボンナノチューブ(CNT)」を通して、セレンディピティの本質に迫ってみましょう。

生活を支えるセレンディピティ

私たちの生活は、数えきれないほどたくさんの科学技術に支えられています。

電子機器や交通といったいわゆるハイテクなものから、何気なく使う日常品や文房具まで。その陰には画期的な発明が隠れています。そしてそうした発明の中には、偶然の産物も少なくありません。

たとえば、本やノートに貼りつけて使う「ポスト・イット(付箋紙)」。これは強力接着剤の開発途中に偶然できた「よくくっつくけれどすぐにとれてしまう」弱い接着剤がヒントになったものです。

ポスト・イット Photo by iStock
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それから、お料理に大活躍の電子レンジも、マイクロ波レーダーの技師がポケットに入れていたチョコレートが溶けていたことがきっかけで生まれました。

このように偶然から何かを発見する能力は、「セレンディピティ(偶察力)」と呼ばれています。

CNTも偶然の産物

「カーボンナノチューブ(CNT)」という素材をご存じでしょうか。ここではCNTにまつわるセレンディピティについてご紹介します。CNTは、炭素原子がたくさんつながりながら筒状になった物質です。

CNTの分子構造 Photo by iStock
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アルミニウムよりも軽く鋼鉄よりも強いCNTは、ゴルフクラブや野球のバットといったスポーツ用品、航空機や自転車といった乗り物などに応用されています。

また引っ張る力に対しとても強く弾力もあることから、地上と宇宙を繋ぐ「宇宙エレベーター」のケーブルの素材としての構想もあります。

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じつはCNTはその発見自体偶然だったのですが、多岐にわたる応用を可能にした量産方法もまた偶然により発見されました。