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日本はいつから「他人の子育て」を監視する社会になったのか

「虐待」をまともに考えるために

孫を虐待したという罪に問われ一度有罪の判決を受けた女性が、二審で逆転無罪になるという「事件」が起きました。こうした判決の背景には、日本社会が子育てに向ける厳しいまなざしがあるのではないか——。日本社会は子育てをどう見ているのか、広井多鶴子・実践女子大教授とジャーナリストの柳原三佳さんの対談、後編です。

【前編はこちら】

子育てに厳しい目が向けられるようになるまで

柳原 医師によって「乳幼児揺さぶられ症候群」だと診断されたために、子どもと引き裂かれたり、逮捕・起訴されて刑事裁判を受けることになった保護者たちを、私は何人も取材してきました。

彼らがいくら、「これは家庭内で起きた事故なんです」と訴えても、病院も警察も、「子どもが脳内にけがをしているのは事実だ」と耳を貸しません。お子さんがけがをするまで愛情を込めて子育てしていたことを裏付けるようなお写真や日記など、たくさん見させていただきました。

それでも、マニュアルによって機械的に「乳幼児揺さぶられ症候群」と診断されたが最後、揺さぶるなどの虐待行為なんてしていない親たちが、「けがをしたのは、私の子育てが間違っていたからでは……」と、自分で自分を追い込んでしまうのです。

 

広井 親への不信感が前提になっているのですね。児童虐待が社会問題になる中で、今の社会は子どもを育てる親に暖かな目を注ぎ、子育てを支えようとするのではなく、虐待をしているのではないかと親を疑い、監視する社会になっているように思います。