「テロリストが人質を思いやる」奇跡が有名テロ事件で起きていた

「犯人VS人質」でサッカーの試合も
此花 わか プロフィール

こういったテロリストと人質の“対話”が、事件終結後に「リマ症候群」と呼ばれるに至る。「ストックホルム症候群」という言葉を聞いたことがある人もいるだろう。これは、長い時間を一緒に過ごすことにより、敵であるはずの加害者に対して被害者が親近感を覚える心理状態を指し、1973年のスウェーデン・ストックホルムで立てこもり事件が起きた際、人質の女性が犯人に共感を寄せたことから名付けられたものだ※3

この事件をきっかけに使われるようになった心理用語「リマ症候群」は、極限の閉塞状況で犯人であるテロリストが人質の心に寄り添っていくようになった、つまり「ストックホルム症候群」とは違い、犯人側の心理を指す。とはいえ、小倉氏は著書『封殺された対話 ペルー日本大使公邸占拠事件再考』で、そうした心理学的な見立てにこう反論している。「ストックホルム症候群だの、リマ症候群だのという言葉が流行語になったが、そんな心理学上の用語以上に、人間的な関係が成立していたことを重視すべきであろう」※2

『ベル・カント とらわれのアリア』
 

投降した者まで射殺したフジモリ政権

詳細は映画を観てほしいのだが、当時のペルー政府のフジモリ政権とMRTAの交渉は赤十字を通して展開されていたが、MRTAのリーダーが政治犯である妻の釈放に固執し、これを拒否したフジモリ政権とは合意に達しなかった。とうとう、事件発生から127日目の1997年4月22日(日本時間)、ペルー陸海空軍の精鋭で編成された特殊部隊140人が日本大使公邸に武力突入。

救出された人質は1人を除く全員の71人で、特殊部隊からも2人の犠牲者が出たが、MRTAメンバー14人は全員爆死か射殺されてしまった。日本大使公邸という日本の主権がおよぶ土地にもかかわらず、日本政府にさえ事前通告はなかったという。