「テロリストが人質を思いやる」奇跡が有名テロ事件で起きていた

「犯人VS人質」でサッカーの試合も
此花 わか プロフィール

「リマ症候群」では説明つかぬ人間の絆

映画では、加瀬亮演じる通訳のゲンが女性テロリストのカルメンにスペイン語を教えていくうちに心を通わせていくが、実際の日本大使公邸内でもスペイン語、フランス語、日本語などの語学講座が盛んで、MRTAのメンバーも日本語学習講座に参加し、しばらくすると日本人の人質を「さん」付けて呼ぶようになった。

『ベル・カント とらわれのアリア』より
 

また、テロリストと人質がサッカーに興じるシーンもあるが、これも史実に近く、「人質 対 MRTA」のサッカー試合の話もあったという※3。ほかにも、映画ではジュリアン・ムーア演じる世界的オペラ歌手、ロクサーヌの歌声が国やイデオロギーを超えて人と人の心を結ぶ役割を果たすが、現実の事件でもラテン音楽がテロリストと人質の触れ合いに一役買っていたらしい※1

元在ペルー大使館一等書記官であり、実際の事件で人質のひとりだった小倉英敬氏曰く、“公邸突入時点から、MRTAが殺人を犯さないように心がけていた点が顕著に見られた”そうだ※2。だからこそ、人質もテロリストに心を許したのだろう。興味深いことに、MRTAの幹部は日本の天皇制、左翼運動や政治構造などについて小倉氏にレクチャーを求め、同様に小倉氏も、MRTAの理論的姿勢や方向性について対話を求めてお互いに議論をしたという。