「テロリストが人質を思いやる」奇跡が有名テロ事件で起きていた

「犯人VS人質」でサッカーの試合も
此花 わか プロフィール

テロリストの多くは“純真”な若者たち

MRTAは武力闘争を通して社会主義革命を目指すゲリラ組織で、新自由主義経済政策を推し進め、社会的格差を広げたフジモリ政権に不満をもっていた。このことから、MRTAは日本大使公邸にいた多数の政府要人、国会議員や各国大使を人質として拘束し、新自由主義経済政策の転換やMRTA政治犯の釈放を要求したが、彼らの最大の狙いは仲間の政治犯の釈放だったという。

『ベル・カント とらわれのアリア』より
 

今作で映し出されている通り、組織のメンバー14人のうち幹部4人を除く10人は、ペルー北東部のジャングル地帯にある貧困層で生まれ育った10代から20代の若者で、そのうち2人は女性だった。しかも、大使館襲撃のため、ひとり5,000ドルの報酬で勧誘され、ジャングル地帯で訓練を受けた者がほとんど※3。ある女性メンバーの母親によると、娘がMRTAに入ったのは革命のためというより、外の世界に出たかったからだそうだ※2

幼い頃から生活のために働き、小学校も終えることができなかった者たちが、社会的上昇など望めない将来に幻滅し、革命に参加したとて不思議ではない。でも、実際の彼らはイデオロギーには染まっておらず、組織への忠誠心も薄く、非常に純真で、彼らの祖父や父の年齢にあたる人質たちに次第に心を開いていった。豊富な人生経験と知識をもつ人質たちとの交流はテロリストの若者たちにとって新鮮で刺激的な経験となり、彼らは人質たちをひとりひとりの人間として見るようになっていったという。