渋野日向子ら大活躍のウラで…女子プロゴルフ界の「厳しすぎる現実」

諸見里しのぶも涙した…
週刊現代 プロフィール

女性特有の現実

このQTでも結果を出せなかった選手たちは、翌シーズンは下部の「ステップアップツアー」で経験を積みながら、出場可能なレギュラーツアーの試合を探すことになる。

「ただ、一度落ちるとなかなか這い上がってくるのが難しい現実があります。

たとえば、藤田光里選手(25歳)、川岸史果選手(25歳)といった期待の若手たちも、ステップアップで1勝ずつしたけれど、レギュラーでは成績を出せず、シード権を取り戻すことはできていません。

やっぱり、ステップアップとレギュラーでは、試合の雰囲気からレベルまでまったく違うんです」(村口氏)

幼い頃からゴルフ一筋に打ち込み、やっとの思いでプロテストに合格しても、トーナメントという終わりなきサバイバルを勝ち続けなければ、コンスタントにツアーに出ることすらままならない。

そんな日々を何年も耐え忍ぶ女子ゴルファーたちにかかる身体的な負担は、計り知れない。

かくして20代後半になると、一ノ瀬のようにケガに泣くケースが後を絶たなくなる。

実際、'19年度にシード権を獲得した女子選手の平均年齢は26・4歳。男子の49・5歳とは大きな開きがある。男子選手ならこれから脂が乗ってくるという年齢の30代は、女子の世界では「現役晩年」にあたるのだ。

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前出の塩谷氏は、女子選手にケガが多い理由を「用具の進化も一因なのではないか」と言う。

「昔だったら、打球の距離やスピードがある選手というのは見た目から明らかでした。でも、最新の道具だと、みんなが同じように飛ばせるようになっている。

裏を返せば、手首や膝といった身体の構造に、より大きな負荷がかかっている部分があるのだと思います」

くわえて、一ノ瀬は女子ゴルファーならではの難しい現実を口にする。

「同世代の選手とよく話すのですが、20代の後半くらいから、練習や試合の疲れがなかなか抜けにくくなってくるんです。

それに、遠征ばかりの日々を過ごしていると、『結婚はどうしよう』とか、『いつまで子供を作れるのか』とか、そういうことも頭をもたげてくる。

私が20代の頃も、いまの若い子と同じように同世代の選手がいっぱいいました。でも、仲の良かった選手たちも一人、また一人といなくなっていった。

『31歳は早いよ』と言っていただけることは多いのですが、大きくない身体でここまで続けられて、自分では十分だと思っています」

エリエールレディス予選の第2ラウンド、プロとしての最終ラウンドをパーで締めくくった諸見里のもとに、同期の上田桃子(33歳)らが駆け寄り、大きな花束を手渡した。諸見里の目から、大粒の涙がこぼれ落ちた。

「いまも、トーナメントに出場したいという情熱はあるんです。予選を通過できなかったときに悔しいと感じる部分も残っている。

でも、コース難易度と予選通過スコアが上がるなか、情熱や悔しさのバランスがとれなくなった。それがいつしか『もう一線を退いてもいいのかな』という決断につながったのかな、と」

本誌の取材に、諸見里は吹っ切れたように語り出した。

沖縄生まれの諸見里は、父がタクシーの運転手などをしながら遠征費を捻出し、血の滲むような練習を重ねてプロ入り。人一倍のハングリー精神を武器に、一気にトッププロへと上り詰めた。

'09年には当時史上最年少の23歳59日でのLPGAメジャー3勝を達成、獲得賞金も1億6526万2708円と、横峯さくらに次ぐランキング第2位となった。