現代の日本の親は、子育てを頑張りすぎるくらい頑張っている

「揺さぶられっ子症候群」裁判から考える
広井 多鶴子, 柳原 三佳 プロフィール

柳原 「児童虐待が年々増加し……」といった言葉をひんぱんに耳にするので、てっきり増えているのだと思い込んでいましたが……。

 

広井 専門家もそのように言う人が多いのですが、私はむしろ減少していると考えています。下記のグラフを見てください。警察庁が取りまとめた「嬰児殺」(0歳児)の認知件数です。加害者は親に限りませんが、親以外の者による殺害を含めても、0歳児の殺害件数は1970年代後半以降急激に減ったのがわかります。

図1:嬰児殺は0歳児の殺害。親以外の者による殺害および未遂を含む。警察庁「年間の犯罪」(各年)より作成

柳原 1960〜70年代には200件以上あった嬰児殺しが、近年は10数件。まさかここまで減っているとは……。しかも、2016年の14件のうち1件は、先日、高裁で無罪判決が出た祖母の事件ですから、さらにマイナス1となりますね。

広井 そうですね。しかも、この数値は未遂を含んでいます。2018年の認知件数は10件、死亡児童数は6人。死亡した子どもはもっと少ないのです。

続けてもうひとつのグラフをご覧ください。こちらは厚生労働省の社会保障審議会が集計した心中を含む「死亡児童数の推移」です。こちらは18歳未満の虐待死のデータですが、2009年以降、死亡児童数は減少しています。

図2:この図についての注はこの記事の末尾を参照

この厚生労働省の調査は、事件化していないものを含めているため、警察統計よりかなり多めになっています。しかも、第13次調査からは、虐待死の数値だけでなく、事故死や病死以外の可能性が少しでもあるもの、つまり虐待とは断定できない「疑義事例」も含めるようになりました。それでも、減少しています。

2017年の第15次調査の「心中以外の虐待死」は52件ですが、うち、疑義事例が23件と4割以上を占めます。その23件のうち、8件が出産当日の死亡です。多くの人がイメージしているような虐待死が増えているわけでは決してないのです。

虐待であれ、病気であれ、事故であれ、乳幼児の死亡が今ほど減少した時代はありません。今の親は歴史上、最も子どもを死なせない親なのです。