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元経済ヤクザが解説「株式投資無法地帯」

個人投資家が生き残る道
猫組長(菅原潮) プロフィール

「HFT」によるミリ秒単位の“先回り”

そうした市況にあって11月18日、個人投資家の置かれた現状を示す一件が報じられた。日経新聞電子版「覗かれる株注⽂データ ⾼速取引、個⼈に先回り」がそれで、SBI証券について書かれている。

この一件には、入り口に①SBI証券②個人投資家の2つの問題がある。そしてその奥にある問題が、「HFT」(高速高頻度取引)などに代表される「富める者の優位性」だ。

一つ一つ紐解いていきたい。

記事によれば、SBI証券を利用する投資家が、この10月から狙った値段で約定できないケースが増えたという。

SBI証券は複数の市場から最良の市場を選択して、注文を執行する「SOR」(スマート・オーダー・ルーティング)と呼ばれるシステムの利用者が多い。注文画面でSORがデフォルト(初期設定)になっており、他の取引所を選ぶ場合は一回一回指定しなければならず、無自覚に「SOR」を選ぶからだ。

SBI証券のSORは「ジャパンネクスト」PTS(私設取引所)を最初に監視し、その後、東証などを監視して最良の市場を選択する。

10月以前、SBI証券は「SOR」で「IOC」(イミディエート・オア・キャンセル)という執行方法をとってきた。IOCを直訳すれば「即時か中止」で、投資家が注文を出した際に成立可能な数量を執行し、約定できなかった残りはキャンセルするという方法だ。ネット証券会社に広く利用されている。

IOCでは、投資家の注文は「板」(売買注文状況を並べたもの)には乗らず、注文情報も公開されない。「先回り」は不可能ということになる。

ところが10月以降、SBI証券は執行方法を「TIF」(タイム・イン・フォース)に変更した。これは「時間指定注文」のことで、注文をキャンセルすることなく「板」の上に、一定の時間乗せる。注文情報が公開されるようになったことで、ジャパンネクストは次の監視先である東証などに「先回り」をして注文を出していた。

 

文章にすると冗長に見えるかも知れないが、この取引にはHFTが使われている。板に乗せた「一定の時間」とは実に100~300ミリ秒だ。先回りの売買も含めて「ミリ秒」の世界で取引された。まばたきが100~150ミリ秒なのだから、文字通り「一瞬」ということだ。

仮に1秒の中で1株100円×1000株を、101円で約10回の売り買いを繰り返しても、トータルの損益は「銭」の単位になる。だが1分で60銭、1時間で3.6円。3桁の億以上の資本を投下すれば1回の株数も増える、そしてこれを多数の銘柄で並列して行えば、どれほど莫大な利益になるのかは理解できるだろう。