実録「好き」をこじらせた男の「ややこしさ」の正体

the pillows30周年ライブで思った
高木 敦史 プロフィール

自分だけのものではない恐怖

ピロウスは長く続けている中で、時々はちょっとブレイクしかける瞬間がありました。先に触れたアニメ『フリクリ』に使われたり、その結果海外で人気が出てアメリカやメキシコでライブをしたりしました。

その後も週刊少年ジャンプで連載されていた漫画『SKET DANCE』で「Funny Bunny」がピックアップされ、この曲は最近だとアクエリアスのCMでuruさんによる、またギャッツビーのWEBムービーで佐藤緋美さんによるカバーが使用されました。

「FunnyBunny」はこれまでにも何度かELLEGARDENやBase Ball Bearや……多くの方にカバーされており、ピロウズ本人もセルフカバーを出しているし、そろそろそれ一曲だけでアルバム作れるんじゃないかってくらいです。

このピロウズのブレイクなき熱狂は、彼らが世の流行り廃りと切り離された場所を近道することなく歩んできた足跡を見守ることが、翻って自分の人生の足跡・変化を確かめているように感じられるからではないでしょうか。

そんな彼らの30周年記念ライブ。ピロウズは今後活動のペースを緩やかにしていくと宣言しているので、今回のライブはキャリアの総決算と言ってしまっても良いかもしれません。

実際、時期を鑑みずにベストアルバムを作るとしたらこれだろう、というようなセットリストでした。私が事前に予測したものと2曲しか食い違わなかったので、自分の直感力についてもほぼ満足です。

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ライブの内容についても大満足ですし、見に来て良かったなと心底思いました。ただ、ライブの内容とは無関係なところで一つ自分にとって興味深かったことがあります。横浜アリーナは笑っちゃうほど広くて、普段、彼らのライブで使われることの多いZepp Tokyoなどのライブハウスに比べても数倍のお客さんがいました。

自分はスタンド席の三階にいたのですが、見える限りの視界がそのお客さんでびっしりと埋まっていした。その光景を見て、なぜだか自分が薄まっていく感覚があったのです。不思議な感覚で、ライブを見ながら頭の中のもう一人の自分がずっとその理由を考えていました。

彼らの曲「ICE PICK」に「好きだったものが後になって突然流行って、懐かしいし嬉しいけどなんか寂しい」ということを歌ったフレーズがあります。このとき感じていたのはまさにこの感情で、なぜ寂しくなるのかといえば「自分はこれが好きだ」という感情は自分だけのものではないということを思い知らされたからではないか——。