実録「好き」をこじらせた男の「ややこしさ」の正体

the pillows30周年ライブで思った
高木 敦史 プロフィール

距離感を、間違えた!

私は実は、好きな物事について人に話すのがヘタクソです。

若い頃は好きなバンドの話とかしたいじゃないですか。でも高校生当時、周囲にピロウズを知っている人は全くおらず、でも話したいから、クラスで近くの席の人たちが好きなバンドの話で盛り上がっているときにそれとなく紛れ込んでプレゼンするわけです。すると大体「あの……ピロウズっていう……」「へえ……」で終わります。

向こうからしたらそんなに頻繁に話すわけでもないクラスメイトが突然知らない名前のバンドを出してきたのだから、曖昧に受け流すのも当然です。今なら分かる、今なら分かります。

 

まずは彼らと日常会話をなんでもなく交わすような間柄――友人になることが必要だったのだ、と。でも当時は萎縮してしまい、「自分が好きなものを人に黙殺される恐怖」を先に覚えてしまいました。

それは次第に「人に好きなものを知られることは、人に弱点を知られることと同じだ」という錯覚に変わり、私は「この世紀末社会でサバイブするためには決して弱点を見せてはならぬ」とひたすら好きなものを隠す人間へと成長しました。

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やがて大学進学を機に上京し、人間関係も広がります。お酒も覚えて、友人と呼べる人間も多少なり増えていきました。しかしやはり根本にある「好き=弱点」という認識は変わらず、かといって好きなものについて話したい欲求も完全には消えない。そこで私は次第に卑怯な手口を覚えます。

たとえば『新世紀エヴァンゲリオン』で有名なガイナックス(当時)が2000年に『フリクリ』というアニメを制作しました。作中ではピロウズの楽曲が大量に使用されているのですが、その当時の話です。

私は「もしかしてブレイクするかも?」と思いながらも平静を装い、ピロウズ好きなんておくびにも出さずに「何か今度のガイナックスのアニメ? に使われるらしい、あの、なんだっけ、ええと……」とすっとぼけて呟き、誰かが「ああ、ピロウズでしょ?」と言ったら「あー、そうそう、それそれ」なんて言いながら内心で「やった! ピロウズの話が出来た! 勝った!」とガッツポーズするとか(会話はそれで終わりましたが)、あとは酔っ払って深夜にカラオケに行ったときにみんなが寝ている隙にピロウズの曲を入れて歌って「よし、誰も『知らない』って言わなかったぞ! 勝った!」と満足したりしていました。