妊娠の思い出を作りたい

季節は、ちょうどクリスマスが終わり、人々が新年を迎える準備にいそしむ頃。
年が明けて、明日は中期中絶をするというその前日に、ふと、恵美さんは妊婦らしい、楽しい思い出を作りたくなった。

恵美さんはブログ「翼くんとの116日」にこう書いている。翼くんは、恵美さんが赤ちゃんにつけた名前だ。

「入院する前日。
旦那さんにお願いをして一緒にお出かけする事になった。
赤ちゃんとの最後のお出かけ。ずっと行きたかったところへ行く事にした。

行きたかった場所はディズニーランド。
誕生日や付き合った記念日、プロポーズの時に旦那さんと来ていた思い出の場所。
3人での思い出を作りたかった。

妊娠11週で浮腫み(NT)を指摘されてから妊娠を隠すようになったから、妊婦らしい写真を1枚も撮っていなかった。
赤ちゃんがお腹にいたという写真をどうしても撮っておきたかった。ミッキーとパパにお腹を触ってもらっている写真を撮った。
最初で最後の妊婦写真。大切な1枚。

旦那さんは辛そうだった。
私は明日は泣いてしまうのが分かっていたから笑っていたかった。
妊娠生活の後半はほとんど泣いていた。
だから少しでも笑顔でいたかった」

 

最初で最後のマタニティフォト。戸籍に残る子ではないが、2人の間に「翼くん」が確かに存在した証だ 写真提供/依田恵美

翌日になって入院すると、人工的に陣痛を誘発して人工妊娠中絶の手術を受けた。
陣痛中、面会の時間が終わるからと夫が帰宅するように言われたが、懇願して、何とか二人で産むことができた。
産声のない、静かなお産だった。