最新刊『かいけつゾロリ スターたんじょう』(原ゆたか著、ポプラ社)

なぜ『かいけつゾロリ』は「読書に興味ない子」を熱狂させ続けるのか

緻密なシナリオとサービス精神の妙

〈質問54 「ゾロリ」ばかりを読んでほかの読物を読んでくれません。どうすればいいでしょうか?〉(一般財団法人大阪国際児童文学振興財団編『子どもの本100問100答』創元社、2013年、120ページ)

1987年から始まる原ゆたかの人気読みものシリーズ『かいけつゾロリ』(ポプラ社)は、子どもたちに圧倒的に支持され、累計3500万部以上を売り上げ現在も継続中だ。その一方で、保護者や司書、教師たちからは「ゾロリばかり読まずに○○も読んでほしい」といったかたちで溜息の対象にもなっている。

大人たちは『ゾロリ』にあきれてばかりで、そもそも「なぜこんなにも『ゾロリ』が子どもたちに支持されているのか?」という点に関しては、ほとんどまともに向き合おうとしない。

 

「本を読まない子」のためだけに

原ゆたかのインタビュー「子どもを面白がらせるコツ」(「児童心理」1999年12月号)によると、「僕は本を読まない子しか対象にしていない」(66ページ)という。

原は、本が好きな子どもに「次は何を読ませようか」「『ゾロリ』ばかりでなく他のものをどう読ませよう」と考えるのではなく、本にまったく興味を持たない子を、いったいどうやって惹きつければいいのか? と考えている。これが冒頭で挙げた『ゾロリ』の批判者たちと、いわば「入り口」からして違うところである。

原は「本がテレビ、ビデオ、アニメ、テレビゲーム、漫画などと同じ土俵に乗れないかと思っている」と語る(前掲書、67ページ)。そしてそのために「面白ければいい」「とにかくページをめくらせるという本の楽しさを体験させるしかない」という方向性を選んだ。

〈大人の評価するいい絵本というのは、芸術的で渋くてシャレていたりして、僕も好きなんですが、それは大人のボクが好きなのであって、子どものときに本当に好きだったかな、と考えるんです。

子どもは、とにかく原色でワーッと目に入ってくるものを受け止められるエネルギーがあります。僕の本は、ちょっと下品だとかよく言われるんですが、それは子どもの自分として、赤は赤と言える色で塗りたいからなんです〉(前掲書、70ページ)

永峰英太郎によるインタビュー「『かいけつゾロリ』作者原ゆたか 僕は子どもの本の世界で認めてもらうしかないと思った」(「AERAwith kids」2008年秋号、79~80ページ)では、子どものころは怪獣映画が好きだったし、『ゾロリ』で目指しているのはスティーブン・スピルバーグ監督の『インディ・ジョーンズ』だと語る。

最新刊『かいけつゾロリのスターたんじょう』

怪獣映画と『インディ・ジョーンズ』の共通点は「ハラハラドキドキ」の連続で息つく暇もないところである。とにかく「次のページをめくりたい!」「ふと気が付いたら、最後まで読んでいた!」という児童書を作りたい、と原は言う。

では原は、どのようにして「ハラハラドキドキ」のお話を、これほど長年作り続けているのか?