1888商品を徹底調査!「第3の保健機能食品」を総点検してみた

トクホより薄弱だった「科学的根拠」
高橋 久仁子 プロフィール

たとえば、資料6-1をご覧いただきたい。「脂肪の排出量を増やす」効果を謳った、あるウーロン茶飲料が宣伝に用いていたグラフである。いかにも、このウーロン茶を飲むことで、「脂肪の排出量」が増えるように見える。

資料6-1
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こんどは、資料6-2を見ていただきたい。「脂肪の摂取量」から「脂肪の排出量」を引いたものを「脂肪の吸収量」と見なしてグラフを描き直したものだ。

資料6-2
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ごくふつうのウーロン茶である対照飲料を飲んだ場合と比べて、「脂肪の吸収量」がさほど減っていないことがわかるだろう。微々たる効果を誇張して、いかにも科学的根拠があるかのように見せるための、グラフの描き方がなされているのだ。

制度がはじまってわずか3年目の2017年の段階で、機能性表示食品の広告に消費者庁が「お灸を据えた」ことに一応の敬意は表する。しかし、わずかな「効果」を大きく見せるトクホ広告を放置したままであるのは、いったいどういうことなのか。

「葛の花由来イソフラボン」を関与成分とする機能性表示食品に対する措置命令は、機能性表示食品の広告にすでに問題が多々、存在することの一端を社会に知らしめてくれた。

 

しかし、機能性表示食品には、誇大広告の問題以前に届出表示そのものがそもそも「誇張された機能性」とおぼしき商品が少なからず存在する。トクホの許可表示は、先述したように複数の専門家による審査を経ており、その表現自体は慎重である。

一方、そのような審査がなく、誰からも「許可」を得ていない機能性表示食品の届出表示は、トクホの表現を超える多機能かつ高機能を表示する、「言った者勝ち」の世界のように見える。

厚生労働省が動いた

たとえば、血圧に言及するトクホの許可表示は、「本品は○○を含んでおり血圧が高めの方に適した飲料です」または「本品は▲を配合しており血圧が気になる方に適した食品です」のように、「血圧を低下させる」という文言はいっさい含まれていない。

ところが、血圧に言及する機能性表示食品(180品目)の場合には、「血圧低下作用のある●は、血圧が高めの方の健康に役立つことが報告されています」とか、「▲には高めの血圧を下げる機能があることが報告されています」のように、トクホより強い調子で「血圧を下げる」効果を表示しているものが96品目にものぼる。

先に触れた「トマト酢生活」は、その広告が「健康増進法第31条第1項の規定に違反する」として勧告を受けたが、機能性表示食品には「表示しようとする機能性」そのものが、すでに健康増進法に抵触しているものがあるように見える。

これに関連して、届出表示に「歩行能力の改善」という文言がある機能性表示食品13品目が、2018年11月21日から2019年4月9日までのあいだに撤回された。2018年11月に厚生労働省が、機能性表示食品に医薬品的効果を標榜したものがあると消費者庁に指摘し、同庁がこの13商品を販売する11社に撤回を要請したことによるとされている。措置命令や勧告が出されたことによるものではない。

「届出受理」=「科学的根拠」ではありません!

この13商品の関与成分は「ロイシン40%配合必須アミノ酸」(2商品)、「3‐ヒドロキシ‐3‐メチルブチレート(HMB)」(11商品)である。

前者の届出表示は「……足の曲げ伸ばしなど筋肉に軽い負荷がかかる運動との併用で、60代以上の方の、加齢によって衰える筋肉の維持に役立つ筋肉をつくる力をサポートする機能と、歩行能力の改善に役立つ機能があることが報告されています」であり、後者は「……自立した日常生活を送る上で必要な筋肉量及び筋力の低下抑制に役立つ機能、歩行能力の改善に役立つ機能、体脂肪の減少に役立つ機能があることが報告されています」である。

前者は「筋肉に軽い負荷がかかる運動との併用で……」とあり、運動することが前提となってはいるが、後者にはその文言すらなく、「これさえ飲めば、歩行能力改善」という誤解を招きかねない。

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消費者庁は、提出される書類の“形式”が整っていれば、内容を審査することなく届出を受理する。「届出が受理された」ことは、決して「信頼に値する科学的根拠がある」ことを意味するものではない。このことを私たち消費者は心にとめておくべきである。

なお、今回は撤回された商品を検討対象外としたため、「歩行能力の改善」は集計対象外である。ちなみに、対象とした1888品目中、「歩行」を届出表示する商品は19品目あり、そのうち7商品が「歩行能力の維持」を謳っている。

現在、「歩行能力の改善」を届出表示する商品はない。

「効果の小ささ」に敏感になろう

食品中にわずかに含まれる栄養素ではない、しかし、病気の予防や健康維持に有効と考えられる物質を「機能性成分」と称している。

それを摂取するとその「機能性」が発揮され、健康が得られるかのような錯覚、いわば“機能性幻想”が、昨今の世の中には蔓延している。トクホや機能性表示食品は、機能性幻想を商品化したものと言えよう。食品成分に過大な機能性幻想を抱くと、食生活が誤った方向に誘導されかねない。

トクホのような個別の審査を経た保健機能食品であっても、その「効果」はわずかでしかない。医薬品ではなく食品なのだから、それは当然のことである。

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しかし、私たち消費者にその「効果の小ささ」は伝えられていない。わずかな効果を大きく見せる宣伝広告がまかり通っている現状に、消費者の期待は膨らまされてしまう。

トクホのこの問題を解決することなく、第3の保健機能食品が国による健康施策としてではなく、経済活性化策として強引につくられた。「機能性表示食品」の実態は「機能性“届出”商品」であり、あるはずの「科学的根拠」は薄弱である。

制度がはじまってからの4年分を総括して、その商品数の多さと、関与成分の種類の多さ、トクホを超えるような機能性の表示等々、もはや無法地帯ではないかと感じる多くの問題に直面した。その実態は、この記事を通して見てきたとおりである。

ほんのわずかでしかない機能性をかんたんに表示できる「国の制度」に、存在意義はない。保健機能食品制度そのものを、廃止を視野に入れた検討を進めるべきである。