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# 消費増税

消費増税後の日本経済、ここへきて「再デフレ」が懸念され始めたワケ

時間をかけてじわじわと効いてくる

消費税率引き上げから早くも2ヵ月が経過しようとしている。考えてみれば当たり前だが、増税反対派の一部が声高に叫んでいた消費税率引き上げをきっかけとした「クラッシュ」は全く起こる気配がない。「経済の体温計」といわれる株価は、逆に10月以降、堅調に推移しており、9月までは出遅れ感が強かった日本株が他国のパフォーマンスに追いついてきた。

現時点で、10月の国内消費関連の経済指標で公表済みのものは少ないため、消費増税の全体的な影響は明らかにされていない。だが、それでも公表された少ない指標をよくみてみると、今回の消費税率引き上げの影響について、興味深い事実がいくつか浮かび上がってくる。

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増税分の価格転嫁はどうだったか

まず、10月の消費者物価指数だが、生鮮食品及びエネルギーを除く総合指数(いわゆる「コアコアCPI」)は前年比で+0.7%の上昇となった。消費税率引き上げ直前の9月は同+0.5%であったので、これまでの消費税率引き上げ時には、1%を悠に超える上昇幅だったので、以前の消費税率引き上げ時と比較すると上げ幅はかなり小さい。

この理由は主に財源として消費税収の増加分の一部が充てられた幼児教育無償化の効果である。特に保育所や幼稚園の保育料が大幅に低下したことが、消費者物価指数全体を0.57%引き下げた。

 

通常、消費税率の引き上げの一部は販売価格の引き上げで消費者に転嫁される。そこで今回、前年比でみた消費増税による販売価格(物価)押し上げ効果をみると、+0.77%ポイントであった。今回の増税幅は+2%ポイントであったので、消費増税分の価格転嫁率は単純計算で38.5%となる。

なお、今回の消費増税に際しては価格転嫁を相殺する目的で軽減税率やポイント還元などが導入されたが、総務省によるとその効果はそれほど大きくなかったようだ。

この単純計算での価格転嫁率だが、過去3回の消費増税時と比較すると著しく低い。例えば、1989年4月の消費税導入時は73.8%、2回目の消費増税である1997年4月時は69.7%、そして、3回目の消費増税である2014年4月時は63.1%であった。そして今回は38.5%であったということは、小売業や外食等の消費関連業種による消費税の負担増分の価格転嫁が従来ほどなされていないことを示唆している。

これは、別の統計でも観察できる。一橋大学が全国のGMS、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニエンスストアのPOSデータを加工・集計した「SRI一橋大学消費者購買指数(週次で公表)」によると、消費者の「購買単価指数(商品価格をその商品の容量で割った容量単価をベースに算出したもの)」の前年同週比上昇率の推移において、消費増税時にみられる「ジャンプ」が、今回はほとんど観察されなかった(図表1)。これは、前回(2014年4月)の消費税率引き上げ時と対照的な結果であった(図表2)。

この単価指数は、「価格効果(同一商品の価格の変化)」、「代替効果(商品カテゴリーは同じながらより容量単価が高い他の既存の商品に需要がシフトする効果)」、「商品交代効果(新規に発売された商品に需要がシフトした効果)」の3つの寄与度に分解されている。

例えば、消費増税が実施された場合、一部の消費者はより容量単価が低い商品に需要をシフトさせることが想定される。この場合、単価にはマイナス寄与の代替効果が出る。また、売り手の小売業は、消費者にとってより魅力的にみえる商品を新たに導入して数量を確保しようとするかもしれない。

 

消費者は、この新商品を購入することによって、価格は既存商品よりも高くても、価格上昇分を上回る満足度を得られるのであれば、新商品に需要をシフトさせるかもしれない。この場合には、単価にはプラス寄与の商品交代効果が出る。

そこで、この寄与度の違いを図表1、2でみると、前回(2014年4月)の消費増税では、「価格効果」のプラス寄与は小さかった一方、「商品交代効果」のプラス寄与度が大きく拡大、「代替効果」のマイナス寄与度が大きく縮小した。だが、今回は、それらの効果の寄与度にもあまり大きな変化はみられていない。

この違いを解釈してみよう。前回の消費増税時には、より容量単価の低い同一商品、及び、新商品への需要シフトがみられたものの、全商品に共通して消費増税分の価格転嫁による価格引き上げがみられたため、「代替効果」と「商品交代効果」の寄与度が大きく上昇(ないしはマイナス幅が大きく縮小)し、需要シフトによって相対的に需要が低下した同一商品の価格効果の寄与度が相対的に小さかったと考えられる。

だが、今回は全般的にあまり大きな価格転嫁がなかったため、需要のシフトも小さく、その結果、各効果の寄与度にも大きな変化はなかったものと推測される。つまり、前回の消費増税時には、価格の転嫁に加え、新商品の導入で小売業者はなんとか利益マージンを確保しようとしていたが、今回は、価格転嫁を抑制し、消費増税分を自らが負担するというスタンスをとっていると考えられる。

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