遺産1億2500万円を夫の兄弟に奪われた「内縁の妻」の無念

夫は何をすべきだったのか?
井口 麻里子 プロフィール

被相続人の「想い」があるなら、遺言を書くべき

また、生命保険金の場合は、あげられるのは現金のみなので、自宅などの不動産をあげるためには、やはり遺言を書いておいてあげるべきだった、と言えるでしょう。

 

もし、康夫さんが法的に有効な遺言を書いておいてくれて、全財産を絵里子さんが取得した場合はどうなっていたでしょう?

絵里子さんが全財産を取得した場合、当然ですが相続税がかかります。

その際、戸籍上の配偶者ではありませんので、「配偶者の税額軽減」という大きな特例が使えませんし、また親族でもありませんので自宅の敷地などについて大きな減額が受けられる「小規模宅地等の特例」も使えません。

むしろ、相続税が2割増しになる「2割加算」という制度の対象となり、相続税の負担は戸籍上の配偶者であった場合と比べ、大変大きなものになります。

ちなみに、この康夫さんのケースで、絵里子さんが戸籍上の配偶者であった場合、相続税の納税は0円ですが、内縁の妻の場合は、概算で700万円ほど納税が発生します。

それでも、時価1億2,500万円の財産を引き継ぎ、何よりも思い出の詰まった自宅で安心して老後を暮らせる幸せと、比べものになりませんよね。

また、たとえ財産が少額の場合でも、自分には何も残らず、全て見知らぬ相続人のところへいってしまったら、残された内縁の妻はその不条理に深く悲しむだろうことが想像できます。

長年連れ添って、そんな歳になって深く傷つけるなんて、本望ではありませんよね。

被相続人の「想い」があるなら、遺言を書かずに死んではなりません。そう申し上げておきましょう。

内縁のパートナー、未認知の子供、ご自身の孫など、相続人ではない人に財産をあげたい想いがある場合、遺言がなければ何もあげられません。

ぜひ、専門家に相談して遺言を書いておいて下さいね。