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忘年会帰りに死ぬ人がいる…法医解剖医がどうしても伝えたいこと

溺死、喧嘩、交通事故…死は意外と近い

用水路で亡くなった人

毎年12月のこの時期になると、解剖室へ運ばれてくる人たちがいる。忘年会の帰りに亡くなった人たちだ。

この日運ばれてきたのは、50代の男性。用水路の中で亡くなっていた。顔や手には擦りむいた傷があった。用水路に落ちたときにできたのだろう。その他には目立った傷はない。

胸腔を見ると、肺がひどく膨らんでいる。それだけではない。肺の表面は空気だらけになっている。肺の表面を指で押すと、プクプクと凹む。

こうした肺は、「溺死肺」と呼ばれている。溺死した遺体に見られる典型的な所見である。

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溺死するときには、鼻や口から水などの溺水が気管を通って肺に入り込んでくる。肺の中は、さぞかし水だらけになっているだろうと思われるかもしれない。

だがそうではない。

実際には、肺の表面は、空気だらけになっている。元々、肺の中には空気が入っている。その空気は流れ込んできた溺水の勢いによって、肺の奥の方へと押し込まれていく。空気が最後にたどり着く場所は肺の表面になる。肺の表面が空気でいっぱいになるのには、そうしたわけがある。