地球のみなさん、こんにちは。毎度おなじみ、ブルーバックスのシンボルキャラクターです。今日も "サイエンス365days" のコーナーをお届けします。
"サイエンス365days" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。
1952年の今日、イギリスの首都ロンドンで、硫黄酸化物を主とする濃い霧、いわゆるロンドンスモッグが発生しました。

当時のロンドンでは家庭の暖炉の燃料として石炭が用いられており、各住宅の煙突からのばい煙によるスモッグが激しく、酷いものでした。
1952年のロンドンスモッグの折には、厳寒による暖房用石炭燃焼の増加に加えて、市内電車のバスへの転換、逆転層による大気の安定が重なって、大気汚染はピークに達しました。
逆転層とは、上空にいくほど低くなる気温が逆に上昇している現象のことで、この現象が起きると大気の拡散が起こりにくくなり、汚染物質が滞留しやすくなると言われています。

12月4日からの数日間だけでロンドン市内の死亡者数は通常よりも4,000人増加しました。当時英国で測定していた大気汚染物質は二酸化硫黄(SO2)と総粉じんですが、この死者が増加した期間との相関をみると、日平均濃度が二酸化硫黄で4倍以上、総粉じんは5~6倍になっています。

このことからイギリス政府、ロンドン市では早急な対策を求められ、大気浄化法(Clean Air Act)などの法律で、工場ばい煙排出の禁止、煤を出す低品質な燃料の規制などを定めました。
日本でも1960年代からはじまった四日市ぜんそくの問題など、その後大気環境における対策が進みました。環境省では、大気汚染の常時監視を行っており、大気汚染物質広域監視システム「そらまめ君」で状況を確認できるシステムになっています。
最近では、中国などの周辺国からの大気中微小粒子状物質(PM2.5)の影響なども問題となっており、環境汚染の問題は地域や国を超えた対応が求められるようになってきました。