ある日突然、夫が失踪

しばらくカウンセリングに通わせてみたが、元夫は行かなくなった。そうして、ある日突然、失踪した。

「急に帰って来なくなり、連絡もつかなくなって、どうしたんだろうと思ったら、なんと仕事も辞めてどこかに身を隠していたんです」 

3歳の息子とマンションに取り残された佐弓さんは、激しく混乱した。そうこうしているうちに、借金取りがやってきた。ピンポン、ピンポン! 

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「当たり前ですけど、これまでの人生、借金取りに追われるなんてことなかったので、息子を抱いて家の中で震えていました。居留守を使おうと思ったけど、息子はまだ小さいので何もわからず、ピンポンって鳴ると、はーい、って答えちゃうんですよ。小声で、ダメーって」

それから何をどうしたか、あまりにも大変すぎて実は記憶がない。気づいたときには息子と二人、父親に実家に連れ戻されていた。元夫とは連絡がつかないまま、あっという間にひと月。このままではどうにもならないと、法律相談に出向いた。そこで「離婚をすれば債務はかからなくなる」と、離婚をすすめられた。

「私、借金だけの問題だったら離婚しなかったと思うんです。働いて一緒に返そう、って言ったと思うんです。でも、私と息子を置いて、自分だけ逃げたことが許せなかった。人として最低! だから、もし戻ってきて、頑張って借金返したとしても、もう夫として信用できないだろうな、信用できない人と一緒に暮らしても苦しいだけだな、と離婚を決意しました」

それで、佐弓さんはメールを出した。「とにかくしんどいので、あなたの最後の誠意を見せてください。それは、あなたが離婚届を書いて送ってくれることです」と。

「どこでも役所に行けば離婚届はもらえるから、100円ショップかどこかでハンコを買ってついて、とにかく送ってください、って。しばらくしてから離婚届が送られてきたので、私もハンコをついて提出しました。メールを出してからどれくらい後だったのかなあ。あのころのことは苦しすぎて、あまり覚えていないんですよ」