何事も準備万端で臨みたいのは、
バレエをやっていた頃の癖かもしれない

その豊かな感受性で彼女は、一つのステージに注がれた熱量だけでなく、そこに辿り着くまでの汗や涙、途中で潰えた夢など、様々な人たちのストーリーを夢想した。お芝居は、面白い。観ていると、心が踊る。でも10代の頃は、芝居を職業にするという発想は、まだ持つことができなかった。このときはまだ“観る”側だった。それで、大学時代に、俳優の塩屋俊さん(※2013年没)が主宰するアクターズクリニックに通うことで、演じることの面白さに開眼する。

撮影/岸本絢

「塩屋さんは、私のコンプレックスもわかった上で、“自分を解放していいんだよ”“自分を許していいんだよ” “お前は大丈夫、芝居をやったほうがいい”と、ずっと言い続けて、励ましてくださいました。でも私は、舞台を通して自分が受け取ることのできた活力みたいなものを、自分も手渡せるのかということに、なかなか確信が持てなかったんです。

バレエをやっていたときは、努力したらそれなりの成果が得られたし、主役になれる人には、相応の実力が備わっていることも明確でした。でも、お芝居となると、その“実力”にわかりやすい基準はない。不安というか、心配は常にあったけれど、塩屋さんの“大丈夫”という言葉を信じて、少しずつ、舞台やドラマのオーディションを受けるようになったんです」

話を聞いていると、物事に対する取り組み方がとてもストイックだ。「誠実ですね」と言うと、「不安なだけです」と答えながら、「何事にも、準備万端で臨みたいのは、バレエをやっていたときの癖かもしれない」と続けた。

「バレエもそうなんですけど、サボると自分が嫌になるんです。『サボった』ってことに、後になって激しく落ち込んでしまう(笑)。それがわかっているから、何事も早め早めにやっておきたいなって思うタイプです。舞台や映画なら観客の方がいて、ドラマなら視聴者の方がいる。自分がお客さんだったら、『いいものを観たい』って思うじゃないですか。だから、一つの作品に参加するときは、『私が足を引っ張ったら大変!』って思ってしまいます。プレッシャーを跳ね除けるためには、役のことを人一倍思うしかない。そういう気持ちが強いのかもしれないです。でも、本当は、ダラダラするのも大好きなんですよ。矛盾してるんですけど(笑)」