ビッグデータが切り開く、中国の「超先進IT社会」と「超監視社会」

利便性は「絶対服従」の入り口か?
野口 悠紀雄 プロフィール

信用スコアの利用は、金融以外にも

金融包摂が広がる限りでは、問題はない。

しかし、問題は、信用スコアがそれ以外の様々な用途に用いられることだ。

顔認証の場合にも、決済の道具にとどまらず、様々な用途に用いられる可能性があると述べた。それと同じことだ。

日本ではデバイスそのものに関心が向いてしまう。だから顔認証のカメラの精度を問題にする。しかし、重要なのは、その裏にあるデータベースなのだ。データベースがなければ、いかに精度の高いカメラでも、それを活用することはできない。

中国では、「顔認証や信用スコアリングによってデータベースが充実してきている」ということが重要なのだ。

 

クレジットスコアは、以前から先進国には存在していた。例えば、アメリカの「FICOスコア」は有名だ。ただし、これらは、クレジットカードやローンの審査のためにしか使われなかった。
 
それに対して、芝麻信用の場合には、金融以外の利用が広がっている。

例えば、シェアサイクルやレンタカー、本の貸し出しサービス、あるいはホテル宿泊などでのデポジット(保証金)の免除、雨傘の無料レンタルなどがある。

また、賃貸物件の契約で敷金が不要になったり、一部の国(シンガポールやルクセンブルク)のビザ取得が容易になるなどの利点もある。

それだけではない。多くの有名企業が、採用時に芝麻信用の点数を考慮すると公言している。「信用スコアが低いと結婚もできない」と言われるほど、大きな影響を持つようになりつつあるのだ。

個人情報は、保険によっても収集される。これは「テレマティックス保険」と言われるものだ。医療情報を収集し、健康管理に気を遣っている人の保険料を安くする仕組みだ。