91歳認知症女性、薬を減らしたら徘徊トラブルがなくなった

不調の原因は病院でもらった薬だった?
週刊現代 プロフィール

この男性は、鎮痛薬や睡眠薬などを常用していたが、睡眠薬の一部(レンドルミンやサイレースなど)には幻覚などの副作用がある。また、抗うつ薬、花粉症の薬や風邪薬のなかにも、同様の副作用を起こす抗コリン作用をもつものがある。

こうした薬を常用していると、意識がぼうっとしたり、物忘れが激しくなったり、あるいは突然意味不明瞭な言葉を発したりすることがある。

あくまで副作用による一時的な症状だが、医師によってはこれらの症状を薬が原因だとは疑わず、「認知症だ」と診断してしまうケースがあるのだ。

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前出の医師・狭間氏は、ごく一般的な胃腸薬を常用していても、認知症のような症状が出ることがあるという。

「H2ブロッカーという胃の薬は、胃酸の分泌を抑えて胸焼けや胃もたれを改善する効果がありますが、この薬は脳にも届いて神経伝達を鈍くさせ、服用すると幻覚などを見たり、怒りっぽくなったり、あるいはぼうっとしてしまうという副作用があります。

高齢者が若い人と同じぐらいの量を常用していると症状が出て、家族が『認知症じゃないか』と思ってしまうことが少なくないのです。

私が訪問診療を行っている方の中にも、最初は『認知症かな?』と思っても、薬剤師や看護師と相談するなかで、認知症ではなく、この薬の副作用が原因だったということが何度もありました。

総合的に判断して、薬の副作用による症状ではないかと思った場合は、ご家族にも説明のうえ、薬を減量したり中止したりすることがあります。量を減らした結果、以前の状態に戻ったケースも珍しくありません」

 

また狭間氏によると、利尿剤を常用している場合にも認知症の症状と似たような副作用が出ることがあるという。

「在宅で療養していた高齢の男性患者が、ある日を境に便を壁に擦り付けるようになりました。これは『弄便』といって、認知症の症状の一つ。

最初は認知症になったのだろうかと疑いました。しかし、その患者さんは足にむくみがあったため、定期的に利尿剤を飲んでいることが分かりました。実は、利尿剤によって脱水症状が起こると、認知症に近い症状がでるのです。

弄便現象もそのひとつ。足のむくみもすでにほとんどなくなっていたので、薬剤師からの提案で、その患者への利尿剤の処方を止めたところ、弄便もなくなりました」

最近、急速に親の様子がおかしくなった。そう感じたら、認知症かと疑う前にまずは常用している薬を並べてみて、その副作用を疑ってみたほうがいい。

「週刊現代」2019年11月16日号より