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「イートイン脱税」は、なぜ私たちをこんなに「ムカつかせる」のか?

進化心理学が暴く「ムカつき」の論理

2019年10月1日より、消費税率引き上げに伴い軽減税率が導入された。現在、飲食店やコンビニでは、「テイクアウトならば8%」「店内飲食やイートインならば10%」の税率が課されている。

事前に出ていた懸念通り、レジで「イートイン」と申告せずに、あるいは「テイクアウト」と虚偽申告して、税率2%分の“おトク”をかすめ取るという行為が、日本国内のあちこちで横行しているようだ。*1

この行為には「イートイン脱税」とのキャッチーなネーミングまでついて、メディアやSNSを大いに賑わせた。

言うまでもなく、「イートイン脱税」は一回や数回はならお目こぼししてもらえるだろうが、常習すれば犯罪と見なされる可能性が高い。このような混乱を招く制度設計も問題であろう。しかし、そもそもこのような言葉が生まれ、議論が盛り上がった背景には、「脱税者」=「ズルをする者」に対する人々の“怒り”がある。

──筆者は、政治や行政のシステムよりも、人間の感情がいかに発達し、現代社会においてどのように作用しているかに関心がある。今回は、この「イートイン脱税」に代表される、人間の「ちょっとしたズル」に対して、なぜ私たちはこれほど「ムカついてしまう」のかについて分析してみたい

(注:最初に断っておくが、本稿ではコトの善悪については論じない。人々の怒りの理由と、その本質をつきとめることにフォーカスする)

 

人間を「進化論と生物学」から見ると…?

分析に使うツールは、いま欧米を中心に注目を集めている「進化心理学(Evolutionary psychology)」だ。

はじめにご紹介しておこう。進化心理学とは何か? 誤解を恐れず簡潔にまとめると、われわれ人間(以下、サピエンス)という動物の心理を、〈進化論と生物学のロジック〉から探っていく学問のことである。

ひと昔前までは、「万物の霊長」たるわれわれサピエンスに進化論や生物学のロジックを当てはめることは、いろんな意味で「ご法度」だった。しかし、アメリカを中心に巻き起こった「社会生物学論争」という約30年間にわたるいざこざを経て、サピエンスの心理や行動を〈生物学的なフレームワーク〉から探求していこうという試みの正当性が認められ、今になってついに花開いているのである。