香港区議選「民主派圧勝」で中国が警戒する米国介入リスク

「一国二制度」はどうなってしまうのか
近藤 大介 プロフィール

【5】選挙を延期した場合、香港全土のデモにつながる

もしも選挙を延期した場合、民主派は勢いづいて、「一国二制度」の崩壊だと非難するのは必至である。そして、現在以上にデモが激しくなるリスクがある。

これ以上にデモが激しくなれば、香港特別行政区政府としては、香港基本法第14条に基づいて、人民解放軍の出動を要請せねばならなくなる。一応、そうした事態も想定して、11月16日に自民解放軍が駐屯地を出て、民主派デモの瓦礫を撤去する清掃活動を行ってみたものの、それが世界的ニュースになり、しかもその多くが好ましい内容ではなかった。

このことから、ここは民主派たちへの「ガス抜き」の意味でも、区議会議員選挙は延期しない方がよいと判断した。

 

【6】選挙を延期した場合、アメリカが本格的に介入してくるリスクがある

これは香港特別行政区政府以上に、そのバックに控える中国政府に言えることだが、アメリカの出方に、ものすごく神経質になっている。

アメリカ連邦議会は、「香港人権民主主義法案」(Hong Kong Human Rights and Democracy Act)を全会一致で可決した。下院が10月15日、上院が11月19日である。 これによってドナルド・トランプ大統領は、10日以内に署名して成立させるか、拒否権を発動して議会に差し戻すかを決断しなければならない。

サインすれば中国との貿易交渉が決裂し、「500億ドルの農産品を中国に買わせる」という計画が破綻する可能性が高い。拒否権を発動すれば、議会との対立が深まり、現在進行中の弾劾審査に拍車がかかることは間違いない。まさに出るも地獄、引くも地獄である。

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香港人権民主主義法の原文は長文で、アメリカ連邦議会のホームページから見られる。

https://www.congress.gov/bill/116th-congress/house-bill/3289/text

アメリカ連邦議会が出している要約は、以下の通りだ。

〈 この法案は、アメリカ法に基づく香港の地位に対処し、香港での人権侵害の責任者に制裁を課している(香港は中国の一部だが、法と経済のシステムは大きく異なっている)。

国務省は、香港がさまざまな条約、協定、およびアメリカ法の下で、独自の扱いを保証するかどうかについて毎年議会に証明する。その分析は、香港が法の支配を守り、(1)香港の中国への帰還に関するイギリスと中国との間の合意、および(2)世界人権宣言を含むさまざまな文書に列挙された権利を保護しているかを評価するものである。

この法案は、2027年までの香港のアメリカの関心事項に関する既存の年次報告要件を拡張し、そのような報告を拡張して、(1)自主規制または中国の行動による香港の自治の制限を含める; (2)香港の特別待遇の撤回が香港の自治をさらに侵食するかどうか。大統領は毎年、アメリカの輸出規制の実施について、アメリカ起源の品目が中国での集団監視に使用されたかどうか、香港が北朝鮮またはイランに対する制裁を回避するために使用されたかどうかなどを、議会に報告する。

国務省は、アメリカ市民を中国に連行するリスクを含む、香港で提案または制定された法律がアメリカの利益に悪影響を及ぼした場合、議会に通知する。大統領は、香港での重大な人権侵害の責任を負う外国人に対して、財産およびビザをブロックする制裁を課す 〉

以上である。これを読むと、「香港監視法」と呼んだ方がいいような法律であり、当然ながら中国政府は猛反発である。