2019.11.30
# 本 # 週刊現代

亡くなった子の「未来」を祀る、東北の風習をヒントにつくった小説

小川洋子の新作『小箱』インタビュー
小川 洋子 プロフィール

―加えて、今作を含め最近の小川さんの小説では、赤ん坊の存在感が鮮烈な形で描かれることが多い気がします。

新しくこの世に生まれたものの神々しさって、これから死に近づいている自分と正反対のものなんですけど、目くばせし合っている感じもあるんです。

彼らの完全さ、何も足すものも引くものもない、これからの人生のすべてがちっちゃい体のなかに用意されているあの感じが、今だからこそよくわかる。自分自身が子育てしていたときは早く終わってほしいとばかり思っていたのに……いまは拝みたい気持ち(笑)。

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―実際、この作品でも死の近しさと赤ん坊の神々しさが自然にリンクしていますよね。

死んだ人がたくさん出てくる小説なのに、不思議なことに真っ暗闇じゃないというか。

ちなみにカバーと扉絵はグランヴィルという風刺画家の作品で、そこに細やかな金の箔押しが施されているんですが、どことなく奇妙なひらめきや明るさのようなものもありますよね。これ、装丁を担当してくれた大島依提亜さんが「箱の中身をイメージしました」とおっしゃってくれたものなんです。

人間は閉じられた世界の中に宇宙をつくることができる。そのことと小説というものは関わりがあるんでしょうね。(取材・文/倉本さおり)

『週刊現代』2019年11月23・30日号より

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