Photo by gettyimages

武蔵小杉タワマン「下水道問題」役所頼みの「完全防御」は難しいワケ

現実をしっかり見つめると…

東日本を中心に、各地に猛威を振るった台風19号。痛ましい被害が報じられるなか、近代的なタワーマンションが林立する駅前一帯が泥水に浸かるというショッキングな映像が全国に伝えられたのが神奈川県川崎市の武蔵小杉である。

本記事では前回に引き続き、武蔵小杉エリアの今後の浸水対策のために誰がどのように責任を負い、どのような対策を行うべきかという課題を、現実に即して考えてみたい。

 

下水道「再整備」にはカネがかかる

前回書いたように、川崎市の浸水対策が台風19号という自然の猛威に耐えられなかったことは、結果論ながら事実である。今後、住民や市議会から浸水対策インフラの整備水準引き上げ要求が強まることは避けられない。

具体的に考えられる対策の一つは、大量降雨時に一時的に水を溜めることができる遊水地や、大規模な雨水貯留管などを行政が主導して増設し、河川や下水管から水が溢れて浸水が発生するのを防ぐことである。

本来こうした方法を実現するには、用地確保からして大変なのだが、今やリニア新幹線のように大深度地下を活用することもできる時代であるから、理論上、その課題はクリアされているかもしれない。

もっとも、用地の権利問題は解決できても地質や地形は無視できない上、周辺住民から反対運動が起こるかもしれず、さらには建設・維持のいずれについてもとにかく莫大な費用がかかる。このため、決して簡単に進められることではない。

Photo by iStock

また、東京湾で今年8月に開催が予定されていたパラトライアスロンW杯のスイム(水泳)種目中止でにわかに有名になり、今回の武蔵小杉でも話題になったのが、汚水と雨水が一本の下水管で流れる「合流式下水道」だ。これを二系統の下水管に分ける分流式に変えることも下水道の設備増強につながるので、有力な改善策ではある。

しかし、現在合流式で整備されている地域の下水道を分流式に変えるとなれば、雨水用の下水管を新たに張り巡らせるわけだから、実現には莫大な費用が必要となる。

それなら最初から分流式で整備しておけばよかったではないか、との指摘が出てきそうだが、そもそも下水道整備は、トイレの水洗化をいち早く進める意図もあって、合流式で早く・安く普及してきた面があるのだ。その意義を忘れ、後からそう言うのは的外れの意見というものであろう。