そしてそのまま、20年ほど経ちました。

今思えば、大人に言うべきでした。私は逃げられましたが、その男が他の子をターゲットにさらなる凶行に及ぶ可能性がありました。集団登校をして、パトロールも増やして、習い事は親が送り迎えをして、対策すべきだったはずです。

でも、もし当時の私がそこまで考えられていたとして、親に話したでしょうか。いえ、言わなかっただろうと思います。10歳の私は、とにかく早くその時のことを忘れるので精一杯でした。私の不要なひと言で大騒ぎになり、自分の日常が壊れてしまうことがなにより怖かったのです。

高校生のときに遭った被害

高校生になって、私はまた性犯罪に遭いました。「なんてことはない」「ただの」「よくある」痴漢です。信じがたいかもしれませんが、痴漢というのは、年頃の女子にはとても身近な、頻繁に起きる犯罪なのです。でも、特に今回の犯罪は身の毛もよだつようなものでした。

痴漢がなぜ「よくある」ことなのだろう。そして学生の女の子を標的にするのだろう。「身近」な「よくある」犯罪のせいで、苦しみは積み重なっているのだ Photo by iSotck

電車で通学中、真夏なのに真っ黒なコートを着た、髪の毛がもじゃもじゃの男性が電車に乗り込んできました。携帯を見ていた私は、目の前に黒い影が現れたことで、初めてその存在に気づきました。

嫌な予感がして動こうにも、満員なので車両を変えることもできません。そうこうしているうちに、男の太い毛むくじゃらの手が私の太ももあたりを触ってきます。

その動きから、たまたまではなく、意図的な接触であることは明白でした。しかし、だからといってすぐに何か出来るわけでも、するわけでもありません。吐き気がするほど気持ち悪いのですが、痴漢は初めてではないので「ちょっと我慢して次で降りるしかない」と思っていました。

しかし私が声を挙げないことに味を占めたのか、その男はスカートの中に手を入れてきたのです。さすがに焦って両手で必死に押し返しますが、ビクともしません。ローファーで男の脛を蹴ってみても、男は気にする様子もなく、私の太ももを撫で続ける。

パニックになりつつある私をあざ笑うかのように、男はそのまま、なんと下着の中にまで手を入れてきたのです。