すでに「少年マンガ」という表現を用いたが、『アフタヌーン』は男性むけの青年誌である。しかし受験モノは、主人公が10代であること、また受験のスポ根っぽさ・バトルっぽさもあいまって、少年マンガ色が濃厚だ。じっさい『ブルーピリオド』も、すくなくとも「受験編」においては、すぐれて少年マンガ的である。
イケメン、学業優秀、不良っぽいけど良いヤツ、という最強の属性をもつ主人公の矢口
高2からはじまるストーリーの背景にあるのは、進路希望の提出である。八虎は不良仲間に「堅実なとこ選ぶかな」と言い、帰宅するとベッドに大学案内の冊子を発見、それを置いた母親は「頼むからちゃんとしたとこ入ってね」と念を押す。序盤をつうじて「将来性」「食べていけるかどうか」という基準を何度も持ちだす八虎は、稼ぎ手としての男性という役割のプレッシャーと不安を抱えている。
同期の龍二いわく「普通に早慶なら楽勝」である八虎は、その役割を果たせそうではある。だが、鋭敏な八虎の脳裏には、以下の自問が浮かばざるをえない。
彼には「将来性」を優先する人生の虚無感までは見えているが、その代案があるわけではない。そんなとき、ラクに好成績が取れるという理由で選択している美術の授業で、「私の好きな風景」という課題を出している美術部顧問の佐伯先生が、以下のように彼の問題を言語化する。
この言葉は八虎の心にトゲのように刺さり、彼にまっ青な早朝の渋谷の絵を描かせることになる。この絵のポイントは、もちろん渋谷はそんなに青くないということ、つまり「世間的な価値」ではなく、八虎の主観の表現だということだ。この拙くも正直な絵は八虎の予想を超えて友人たちに伝わり、八虎は感動して泣いてしまう。
かくして八虎の