積水ハウスの地面師事件、「封印」された「内部文書」を全部明かす!

そこには社長の責任をめぐる文言が…
藤岡 雅 プロフィール

「決済の前倒しを了解している」と…

筆者が入手した「原案」を下記、忠実に引用してみよう。

なお、「三谷」とは当時、常務執行役員でマンション事業本部長だった三谷和司氏、「黒田」とは当時、執行役員不動産部長だった黒田章氏であり、また「中田」とは当時、常務執行役員法務部長だった中田孝治氏のことである。いずれもこの地面師事件後、現場の責任者として要職を解かれ、執行役員を退任している。

〈4.業務執行責任者の責任
本件取引の全体像を把握して、誤った執行にならないよう防ぐ責任は業務執行責任の最高位者にあり、最後の砦である。
 社長の本件との接点は、以下のとおりであるが、各タイミングでの適切な判断と対応が行われたのか。

(1)社長決裁直前の現場視察時に、物件は、荒廃したまま長期間放置された状態であった。
(2)同じく、現場視察において、社長は、(株)IKUTAの信用性に関する質問をしているが、三谷は、初期情報の十分な検証がないのに、同時決済すれば同社の信用度はそれ程問題ないと回答し、そのままとなっている。
(3)稟議決裁の際、中間業者が(株)IKUTAからIKUTA(株)に変更されているが、変更について、明確な質問をしていない。
(4)稟議決裁は、「事後回付」とされており、通常決裁より責任は重い。
(5)残代金決済時に、黒田は三谷に対し、社長の了解を得ることを要求している。この時、4通の内容証明郵便の事実は社長に報告していないとされている。ただし、ネガティブ情報は得ており、社長は、三谷から説明を受け、中田に確認した上で、リスク情報は問題ないと判断して、決済の前倒しを了解している。

業務執行責任者として、取引の全体像を把握せず、重大なリスクを認識できなかったことは、経営上、重い責任がある〉

(註:()内数字は筆者が便宜上挿入したもので、原文は「・」で記載)

 

調査報告書の「原案」が示していたこの5つの具体的な指摘は、決裁権者が取引からの撤退を検討すべきリスク情報に接する機会がいくつもあったことを物語っている。そして、その地面師詐欺にあった取引の決裁権者こそが、当時社長だった阿部氏だったのである。

筆者は株主代表訴訟や地面師事件の取引に関連する民事裁判についての資料をつぶさに分析してきたが、これらの資料を総合してこの5つの指摘を検討してみれば、これは阿部氏が数あるリスク情報に接しながら、その都度、リスクを見過ごしたために「適切な判断と対応」が行われなかったと調査対策委員会が考えていたことが伺える。

つまり、この5つの指摘こそが阿部氏に「重い責任がある」とする明確な根拠なのだ。

以下、詳しく検討してみよう。