STAP細胞事件が覆い隠した科学技術立国ニッポンの「ヤバい現実」

「史上最悪の研究不正」をご存知か?
榎木 英介 プロフィール

何も学ばなかった科学界

ほかにも、利益相反の問題など、STAP細胞事件があらわにした問題で手付かずのものがある。これらも含め、STAP細胞事件で明らかになった課題はまったく解決していない。

研究者たちの意識も変わっていない。

私はSTAP細胞事件後、様々な大学や研究機関、学会などで、健全な研究を行っていくために何をすべきか講演行脚をしているが、よく聞くのが、一部のけしからん輩のために、まっとうな研究者が迷惑をしているという、いわば被害者意識の吐露だ。

しかし、最近日本人研究者や日本人医師が、留学先で行った行為を研究不正とみなされ、処分される事例が相次いでいる。日本では当たり前に行っていた行為が研究不正と認定されてしまうのだ。

その背景には、医師を中心に、どのような行為が不適切な行為なのかといった基礎的な知識が身についていないことや、研究不正を他人事と考えて、自らの行為を見つめなおさないことから来ていると言える。

〔PHOTO〕iStock

このように誰しも研究不正や不適切な行為を行う可能性があるのだが、当事者意識を持つ研究者が多くないのは、研究不正を特異な個人が起こす問題だということを強く印象づけてしまったSTAP細胞事件の負の遺産だと言わざるを得ない。

研究機関も研究者も科学界も、そして行政も、STAP細胞事件から何も学んでいないのだ。

 

「研究公正」を科学技術政策の中心に

正直なところ、大学や研究機関も、そして研究者の多くも、研究不正対策を「負のコスト」と考え、研究不正対策に時間も人員も金も割きたくないと考えているだろう。

その意識は、大学や研究機関のなかにも、研究不正を取り扱う専門の部署がないことにも透けて見える。担当者は他の仕事と兼任しており、人事異動でいつ担当者が変わるか分からない。