STAP細胞事件が覆い隠した科学技術立国ニッポンの「ヤバい現実」

「史上最悪の研究不正」をご存知か?
榎木 英介 プロフィール

世界中から懐疑的な目

研究不正を含めた不適切な論文の撤回を監視するサイト「論文撤回」によれば、S氏の撤回論文数87報は、個人別の論文撤回数ランキングの3位にあたる。それだけでも驚きであるが、もっと驚きなのは、撤回論文数ランキングの上位に日本人が多数入っていることだ。

このランキングのトップはF氏。日本人の麻酔科医だ。その撤回数は実に183報。当分記録は更新されないだろう。

第4位は元慶應義塾大学の研究者I氏の69報。実はI氏は元弘前大学のS氏の共同研究者だった。そして第6位のS氏(撤回論文数53報)は麻酔科医。トップのF氏とは、お互いの研究には無関係ながら、業績を水増しするために論文の著者になる協定を結んでいた。そのS氏だが、F氏の論文撤回に巻き込まれただけでなく、自身も研究不正を行なっていたのだ。

このように、撤回論文数が多い研究者のランキングのトップ6のうち4人が日本人だ。そして4人全員が医者だ。

 

撤回論文数ランキングをさらに見ていくと、11位に東大教授だった医師ではない研究者のK氏が(撤回論文数40報)、14位に医師のM氏(撤回論文数32報)がランクインしている。M氏は研究不正が認定され、研究費の受給停止処分を受けているが、地位保全の処分を裁判所から勝ち取り、いまだ某大学の現役教授のままだ。

このように、日本人の医師を中心とする研究者が、研究不正や不適切な行為による論文撤回を繰り返しており、世界中に恥をさらしている。

〔PHOTO〕iStock

なぜ医師が研究不正や不適切な行為による論文を作り続けることができたのか。

それには相互批判ができない医師特有の文化が影響している。上意下達が徹底し、学閥や診療科による分断が進む医師の世界では、たとえおかしな行為が行われているのを知ったとしても、簡単には批判ができない。

思えばSTAP細胞の研究も医師が関わり、秘密裏に行われ、批判を受けることがなかった。チームリーダーなどある程度の地位に就いた研究者を他の研究者が批判しにくいという環境もあった。

上述の撤回論文は、多くがSTAP細胞事件の前に書かれたものだが、事件後、科学界に相互批判ができる研究環境が広がっているのだろうか。