STAP細胞事件が覆い隠した科学技術立国ニッポンの「ヤバい現実」

「史上最悪の研究不正」をご存知か?
榎木 英介 プロフィール

史上最悪とさえ呼ばれる日本の研究者が起こした事件が、今世界を震撼させている。それは、元弘前大学教授で医師のS氏が起こした事件だ。

・元弘前大学医学部所属教員による研究活動上の不正行為(捏造・改ざん・盗用)の認定について(文部科学省)
http://www.mext.go.jp/a_menu/jinzai/fusei/1404087.htm
・研究活動の不正行為に関する調査結果について(弘前大学)
https://www.hirosaki-u.ac.jp/30242.html

S氏は骨粗鬆症などの専門家で、論文の多くが患者の治療ガイドラインに取り入れられるなど、影響力があった。

ところが、やったとされる臨床研究が実際は行われていないなど、論文に多くの研究不正が見つかった。その他不適切な行為も多数確認された。

2019年11月21日現在、撤回された論文数は実に87報に及ぶ。

 

撤回論文を除くと、患者の治療ガイドラインの結論が変わってしまうという。つまり、S氏の不適切な論文のために、患者が不適切な治療を受けていたことになる。患者への影響は計り知れない。

これは、発表後比較的短期間に撤回され、他の研究に引用されることがなかったSTAP細胞論文どころの話ではない。史上最悪の研究不正と言われるわけだ。

〔PHOTO〕iStock

この事件は世界で最も影響力があるとされる科学雑誌サイエンスとネイチャーが共に誌面を割いて大きく取り上げたほどだ。

しかし、これほどの事件でありながら、日本国内ではほとんど報道されていない。STAP細胞に関係する報道の0.1%にも満たない報道量だろう。

なお、S氏は研究不正を追及され、自死したとされる。STAP細胞事件のときの笹井芳樹氏の自死を思い起こさせる。日本では責任の取りかたの一つとされる自死だが、残念ながら諸外国から批判されている。真相を明らかにすることなく死ぬことは、責任を取ったことにはならないと思われているのだ。