「天才・ユーミン」少女時代の「仰天の伝説」の数々

「普通の子」が「荒井由実」になるまで
週刊現代 プロフィール

「自分の歌い方」を見つけるまで

ご存じのように、どこか鼻にかかったようなユーミンの歌声はかなり特徴的だ。さらに、正確な音程を取るのも得意ではない。はっきり言えば、歌手としてのユーミンは決して「上手い人」ではない。実際、ユーミンは自分の声にコンプレックスを抱いていた。

ファーストアルバム『ひこうき雲』を含め荒井由実時代の全作品のレコーディングディレクターを務めた有賀恒夫氏は、こう証言する。

 

「彼女はもともと作曲家を志向していて、『人前で歌いたくない』と言っていました。でも少しずつ、歌手への考えを変えていったようです。レコーディングの際は、歌声だけを取り出してチェックすることを嫌がっていました。『まるでトイレのドアを開けられたような気分』なんて。これはさすがの表現でしょう。

たしかに、『ひこうき雲』をレコーディングしたときの歌い方にはクセがあった。彼女のビブラートは細かく声を震わせる、いわゆる『ちりめんビブラート』でした。

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これでは、どうしても歌が不安定に聴こえてしまう。その部分だけは譲れず、ビブラートをかけない歌い方に矯正しました。しかし、その習得は簡単ではない。彼女も相当な努力を重ね、自分の歌い方を手にいれたんです」

歌手としてデビューしてからも、彼女の声が変だとあげつらう評論家は多かった。しかし、そんな雑音は長くは続かない。ユーミンの作り出す音楽が本物で、その声には何にも代えられない魅力が宿っていたからだ。

「いま、改めて彼女の歌を聴き返してみると、クリスタルのように繊細で壊れそうだけど、澄みきっていることに気づかされます。人の心に深く入り込む声なんです。あの声は唯一無二のもの。彼女の声は、彼女の作品を表現するためには欠かすことができません。ユーミンの曲の最高の歌い手は、ユーミンなんです。

だからこそ、当時のコンサートで多少の音程のブレがあっても、多くの観客はその歌声に惹きつけられる。彼女が彼女の曲を歌ってくれるだけで、多くの人が喜びを感じるのではないでしょうか」(前出・有賀氏)

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