GAFAに劣らぬ影響力! アドビが挑む「新しいビジネス」とは

バズワードの影に隠れているけれど……
西田 宗千佳 プロフィール

本書の取材過程では、JALやアスクル、三井住友カードといった、日本の最前線でデジタルトランスフォーメーションに取り組む企業を訪ね歩いたが、今回目にした事例で筆者が最も面白いと感じたのは、彼らにツールを売るアドビ自身が「苛烈なデジタルトランスフォーメーションを体験した企業」であり、自らをモデルケースとして学んだ知識や経験をもとに、他社へとシステムを販売している、という事実である。

実践者の「生の声」を聞きたい

「このツールがすごい」「この技術がスゴイ」というのは簡単だ。だが、「導入によって本当に変わるのはどういう部分なのか」がわからなければ、ツールを使う意味はない。本書の執筆を決意したのも、アドビ自身にそのことを訊ねたかったからだし、実践企業の生の声を聞いてみたかったからだ。

特にデジタルマーケティングについては、必ずしもメリットばかりではないこともわかっている。消費者の視点からいえば、「自分を広告が追いかけてくる」ことにもつながるからだ。

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SNSでもウェブでも、我々の行動はPCやスマートフォンを通じて逐一、記録されている。デジタルマーケティングの本質の一つは、そのようにして蓄積された情報を使って、人々の行動を分析することにある。

だが、もう一つの本質として、「消費者を追いかけることがデジタルマーケティングではない」ということも、実践者の言葉から見えてきた。「顧客との関係をどう形づくるか」「顧客が求めることをどう知るか」といったことが重要なのであり、「とにかく広告を見せる」ことが重要なのではない──。

 

人の行動は「属性」で決まる

面白い発見があった。

実践者の多くが、消費者の年齢や性別といったわかりやすい指標「以外」を重視しはじめていることだ。人の行動は年齢や性別で決まるのではなく、その人の「属性」で決まるようだ。我々が頭で想像する世界と、データから得られる実際の顧客のふるまいは異なっている。

そのことを理解したうえで、ビジネスの形をどうつくっていくのか? 執筆の過程で筆者には、「デジタルトランスフォーメーションの本質はそこにあるのではないか」と思えてきた。

人のふるまいを知ることは、人とビジネスの関係を問い直すことである──。アドビという企業の戦略を分析することで、そんなことを感じとることができたのが、本書の取材・執筆を通じての最大の収穫だったのではないか、そう考えているところだ。