小泉進次郎「無内容発言」が妙に「説得力」を持つのはなぜなのか…?

有権者が「説得力」を感じる条件
三浦 麻子 プロフィール

「ゆとり」がないとき、内容は吟味しない

先ほどの例も現実によくある状況だが、ここからはより本稿のテーマにひきつけて、選挙において候補者が有権者に働きかける場面を使った実験的研究を紹介しよう。

 

私たち(中村・三浦、2019)の実験では、参加者に自分が居住する市町村の首長選挙が行われることを想定してもらい、立候補した2名の候補者とその政策(図参照)を読ませて、どちらの候補者の政策を重視すべきか、好ましいと思うか、などを尋ねた。

候補者は、一方は地元の出身者(図左)で、もう一方は地元とは縁のない人物(図右)である。政策はいずれも高齢化対策に関するものだが、地元出身者の政策は、ぼんやりと「高齢者には幸せに暮らしてもらいたい」とは書かれているものの、あまり具体的ではない。一方、非地元出身者の政策は、介護職員の待遇改善や在宅介護の知識技術支援など、どう取り組むかが具体的に示されている。

中村・三浦(2019)より引用

ヒューリスティック処理がなされれば「地元出身である」というわかりやすい情報に反応して地元出身者の政策の方が、一方で、システマティック処理がなされれば情報の具体性の高さに反応して非地元出身者の政策の方が、それぞれより高い評価を得ると考えられる。

実験1では、参加者がこれを読むときに「二重課題」という手法を用いて、気持ちの余裕を奪う条件を作った。具体的には、参加者のうち半数には、単に文章に目を通すだけではなく、「か行」の文字があったらボタンを押す課題を同時に行うように求めた。

実験2では、文章に目を通すために与える時間をとても短くして、時間の余裕を奪う条件を作った。

HSMにもとづくと、マルチタスクをこなさなければならない、あるいは、ごく短時間で情報を読むことを求められた参加者は、落ち着いて内容を吟味する余裕を失ってしまうために、システマティック処理をすることなく、地元出身者の政策の方を高く評価しがちになると予測できる。

関連記事