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なぜ『盗り鉄』は減らないのか?鉄道会社が直面する「不都合な現実」

曖昧すぎる鉄道古物売買の闇
杉山 淳一 プロフィール

かくして、鉄道古物は収集家に渡る。蒸気機関車のナンバープレート、列車のヘッドマークなどを飾る飲食店は昔からあった。そして、手に余る物品は収集家同士で交換するとか、骨董品的な価値観で古物商が売買するようになる。ただし、その鉄道古物が廃品回収のルートに乗った物か、鉄道会社から不法に持ち出された物かを区別する方法はない。そこはブラックボックスであり、鉄道古物商はグレーゾーンな商売になっている。

こうした状況から、鉄道会社は鉄道古物を欲しがるファンの存在を認知していたはずだ。しかし鉄道会社はファン向けのビジネスではないから、鉄道ファンに鉄道古物を売るというビジネスに踏み出せなかった。鉄道古物のどれに価値があるか不明だし、並べて売る場所もない。人気商品は希望者が殺到するかもしれないけれど、それにどう対応するかも解らない。

 

鉄道会社が鉄道ファン向けに鉄道古物を売る。その転機のひとつが1994(平成6)年から始まった「鉄道フェスティバル」だ。明治5年に日本で鉄道が開業した10月14日を記念して、国や鉄道事業者、関係団体などが「鉄道の日」実行委員会を組織し、鉄道への理解と親睦を深めるために開催している。主な会場は日比谷公園で、ここに全国各地から鉄道事業者が出展し、自社の鉄道古物やオリジナルグッズなどを販売している。

「鉄道フェスティバル」は、鉄道会社が鉄道ファンの欲しがる気持ちに応えるという画期的なイベントとなった。いわば、鉄道古物販売の「正規ルート」の誕生だ。そして、現在は鉄道会社が開催する車両基地イベントなどでも同業他社が仲良く出展しあい、鉄道古物やオリジナルグッズを販売している。

鉄道会社にとっても鉄道古物の販売は利点がある。従来、キロあたり、トンあたりいくらで引き取られていた鉄くずが、その何倍もの価格で売れる。事業系ゴミとして有償で処分していた座席やシートカバー、使用済みきっぷも売れる。

そしてここにはもう一つの効果もある。収集家の「買えないから盗む」という動機を封じられるからだ。誰だって盗みたいわけじゃない。買えるものなら買いたいのだ。