韓国・文在寅は何がしたかったのか…「GSOMIA騒動」が与える影響

韓国の相対的な役割は低下していく
佐藤 丙午 プロフィール

韓国の挫折

しかし、11月22日のデッドラインになっても、これらの圧力が機能せず、日本が政策を変更しないことが明らかになり、韓国は大きな挫折を味わうことになった。

日本は安全保障貿易管理に関する実務者交渉の再開に合意するなど、一応韓国の「顔」を立てたが、今後韓国は日韓関係に真剣に向き合う必要が生まれた。

さらに、米国が苦労して作り上げてきたGSOMIAに関する協力体制を揺さぶり、米国の戦略的利益を手段として活用したコストも、今後大きく韓国の外交安全保障政策にのしかかることになるだろう。

日米の安全保障関係者は、日韓GSOMIAの破棄で一番得をするのは北朝鮮や中国、さらにはロシアであると警鐘を鳴らしてきた。安全保障貿易管理にかかわる日本の政策変更を求める上で、日米韓の安全保障協力の実質的な内容の一つであるGSOMIAを破棄することは、釣り合わない取引であるとも指摘していた。やっと最終段階で文大統領は、日本に対して妥協し、賢明な選択をしたのである。

徴用工裁判や、オバマ政権の下で合意された慰安婦合意の破棄など、日韓の間に横たわる問題は、短期的に解決が期待できるものではない。

 

安全保障貿易管理において日本が韓国に求めていたのは、輸出管理当局間の真摯な対話と、日本側の疑問に対する問い合わせに、十分な体制を整備した上で、専門的で誠実な回答を行うことだけであった。

この問題でさえも、日米韓の安全保障協力の象徴を破壊する寸前にまで至った。その意味で、今後も韓国が瀬戸際戦略をとる可能性は否定できず、しかしそれに対して、日本は「大人の対応」をするのではなく、「普通の」国家同士の関係を望む傾向は強まる。これは、朝鮮半島併合の歴史に関する「贖罪意識」世代の第一線からの交代と合する。

今回なぜ韓国が挫折したのか、という問題を考えると、そこには文大統領の性格も関係ある。GSOMIA延長の発表は、大統領本人ではなく、金次官が行っている。事案の性格も関係するが、「ナルシスト」の一面もある大統領には、メディアの前で国民に挫折を受け入れる姿を晒すのは耐えられなかったのだろう。

冷静に考えると、文大統領は大統領選挙期間中からGSOMIAの破棄を政策として掲げており、日本の安全保障貿易管理の強化の機会を捉え、それを実現する合理的な状況と認識したとしても不思議ではない。

それの失敗を認めることは、自身の支持者に対する背信でもあり、苦渋の選択であったことも理解できる。そして、今回日米両国から「イエローカード」を突き付けられた意味は大きく、どれだけ「条件付き」の延長を主張しても、外交での立場は極めて弱くなった。

韓国の中国に対する「三不一限」の約束は異様に感じるが、韓国が今後本格的に「レッドチーム」に鞍替えすることを望んでいるようには見えない。したがって、今後文大統領は、国内政治の圧力を利用しつつも、自国の戦略的な立ち位置の判断を間違えないようにする必要がある

では、このような状態の韓国を前に、日本の政策について展望する。

関連記事