Kodansha Photo Archives

【サイエンス365日】革新的な特急電車「こだま」が運行開始!

科学 今日はこんな日

"サイエンス365日" は、あの科学者が生まれた、あの現象が発見された、など科学に関する歴史的な出来事を紹介するコーナーです。

電車タイプの長距離列車の先駆け

1958年(昭和33年)のこの日、日本で初めての動力分散方式による特急列車“ビジネス特急こだま”が、東海道線の東京〜神戸間で運行を開始しました。

鉄道列車の駆動方式は、動力車が編成中にまとまって配置される動力集中方式と、動力が編成中の複数の車両に分散される動力分散方式があり、前者は機関車が客車や貨車を引くタイプなど、後者はいわゆる電車タイプを指します。

電車タイプ(動力分散方式)による長距離優等列車は、当時としては世界でも稀な例でした。

【写真】こだま号 photo by kodansha photo archives こだま型20系電車。東京・田町で photo by kodansha photo archives

乗車時間が長く、運賃とは別に料金が必要な長距離優等列車には、ある程度のサービス水準が求められ、運転時の騒音発生源が客室近傍(床下)にある動力分散方式には、懐疑的な声も多くありました。

1946年に東海道線にデビューした湘南電車が好評だったため、それまで近距離輸送を主に担っていた電車列車による中・長距離列車が徐々に広まり、ついには全線電化が完成した東京〜神戸で電車による特急列車の運転が決定されたのです。

国鉄は昭和33年10月のダイヤ改正に間に合わせるべく、準備を進めてきました。しかし、車両落成が遅れ、試運転や乗務員の習熟が間に合わなくなってしまったため、やむなくデビュー延期を決定し、捻出された1ヵ月間に営業運転される予定だったダイヤで、試運転や研修を行い、この日初運転を迎えたのです。

デザインも機能も最新鋭!

運用される20系列(後に151系列に改番、さらに181系列に改造)電車は、当時の人にスピード感を与えた特徴的な流線型ボンネットの先頭車に、6両の中間車両で編成されました。ボンネット内部には電動発電機(MG)と空気圧縮機(CP)が収められ、騒音を発する機器を客室から離すことで静粛性を確保しました。

【写真】計画時のスケッチと製造中の様子計画時のスケッチと製造中の様子。計画段階ではエンジの帯が先頭部分まで回り込んでいた。装架中の台車が空気バネ使用のもの Photo by Kodansha photo archives

さらに、非常用を除く全ての窓を複層固定とし、冷房が珍しいこの頃に完全空調を実現、走行にともなう振動を抑制・減衰させるために台車と車体の間に設けられる枕ばねは、空気バネ(エア・サスペンション)としました。

空気バネは、「一定の温度の下での気体の体積が圧力に反比例する」というボイルの法則を利用したもので、〈空気の体積を圧縮すると圧力(反発力)は増加する〉という性質から、荷重や振動にかかわらず一定の柔らかいばね特性が得られ、車両の走行安定性や乗り心地の確保を目指しました。

数々の新技術によるこだま型20系電車は、1959年7月の高速試験で最高時速163kmを記録しました。

予定より1ヵ月遅れでデビューしたこだま号でしたが、"ビジネス特急"の名のごとくビジネス・マンを中心に利用され、常に満席状態を誇りました。東京〜神戸の途中停車は、横浜、名古屋、京都、大阪だけで、今の新幹線のぞみ号並みの速達性です。こだま号運転によって、ほかの列車の利用率は変わらなかったので、国鉄内部でも「営業開拓による新規需要の掘り起こしに成功」と評価されたそうです。

【写真】こだま号の車内設備2等車(現・グリーン車)に設けられたビネスルーム(左)と、立席軽食のビュッフェ車 Photo by Kodansha photo archives

また、電車型特急の実用化は、本格化する新幹線計画を加速させたとされています。丹那トンネル熱海坑口で、東海道新幹線(当時は東海道新線)の起工式が行われたのは、翌1959年4月のことです。こだまの愛称は新幹線にも引き継がれ、今でも親しまれています。