『1122』が描く新しい夫婦の形

……と、ストーリーだけ辿れば破綻まっしぐらの夫婦だが、漫画はそうは描かない。

「セックスぐらい」外でしてくればいい、と一時の気持ちで始めた制度により、夫婦の関係性はややこしく歪になっていくが、それでも彼らは「いい夫婦」でいようとし続ける。夫がぎっくり腰で苦しんでいたら風俗でお金を払っていてもすぐに帰るし、雨の中妻の帰りが遅かったら、傘をもって駅まで迎えに行く。お互いの親や親戚に嫌なことを言われたら、相手が傷つかないようにフォローしたり慰めたりする。恋愛やセックスこそ外でしている2人だが、それでも夫婦としての絆は強固だ。

いちこは言う。

「わたしたちはいびつな夫婦かもしれない」
「でもそれでもいい」
「自分で選んだ人と自分たちのやり方で家族になるの」

恋愛の末に結婚という契約を結んだふたりは、もっといい形を求めて新たにルールを作り、自分たちの家族の姿を模索していく。周囲も巻き込む不倫という形をとるのは、正直悪手としか思えないし、今のところは全くうまくいっていない。ふたりは常に思い悩み、苦しみ、ときどき大きな失敗をする。

でも、それでも諦めず、夫婦であり続けようとする、そういう点で極めて前向きな作品だ。

ハプバーから帰ってこないだけでソワソワしてしまう私にとっては、彼らのたくましさが眩しい。

そして、これは一読者のワガママと思いつつも、どうかふたりの家族の形が「仲睦まじくセックスも楽しむのがいい夫婦」なんて"ありふれた幸せ"に決着せず、一切我慢も妥協もない新たな関係性へと結び付くといいな、なんて希望を抱きながら続きを待っているのだ。「我慢してセックスする」わけでもなく「セックスを我慢する」わけでもなく、それでも崩れない夫婦の形があったら、救われる人は想像以上に多くいるのではないか。

夫婦の数だけ、夫婦の在り方がある。それぞれの夫婦が幸せである姿は、ふたりで決めればいい。ただ、「独りで決める」ではないからこそ、やっぱいでもある Photo by iSotck

『1122』「公認不倫」を選択した30代セックスレス夫婦のいちことおとや。
「恋人」との別れからふたたび近寄るかに見えた二人だが、再び公認不倫の先にあるものは果たしてーー。夫婦はこの危機を乗り越えることができるのか。「結婚」とは何かを問いかける、各メディアで話題沸騰の意欲作! 6巻は2019年11月22日発売。