いい夫婦って一体なんだろう? 宮本さんの答えとは

撮影は、8~9月を中心に行われた。しかし、『いい夫婦の日』というテーマが、宮本さんの中で何か定まらなかったという。彼らを通して、いい夫婦とは何か? 果たして伝わっているのか、自分はそれを消化できているのか、という問いがずっと心の中であったというのだ。

「その答えは、最後の撮影で、見えた感じがありました」

モデルになったのは、生まれつき鼻と口に血管の塊があり、40回以上も手術を繰り返してきた動静脈奇形の女性だった。彼女は、自分に対して夫がどうしてこんなにもやさしくしてくれるのかわからないので、それを知るために撮影したいと宮本さんに撮影許諾を申し出たという。

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撮影日、ふたりとも笑顔で現場に現れたが、いざレンズを向けるととても緊張してしまい、表情が固くなるばかりだったという。リラックスしてもらおうと、宮本さんが「おふたりは結婚してどれぐらいなんですか?」と尋ねると、彼女ははたと思い出したように、「あ! 今日結婚記念日だわ!」と言ったという。撮影の日が、18年目の結婚記念日だったのだ。

「そうしたら、彼女が旦那さんに『こんな私で、18年間ありがとう』と言ったんですね。その瞬間、旦那さんの表情がかわったんですね。そこから、ふたりは視線はカメラをみているのですが、ずっとふたりで何か話していて、展示しているのはそのときの一枚なんです。

動静脈奇形の妻と夫から、今回のテーマの答えが自然と浮かび上がった。撮影/宮本直孝

このふたりのやり取りを見ていて、あそうか、夫婦とは感謝することなんだな、と。今回撮影をしてみて、外見に症状があるから、特別な夫婦像があるということはありませんでした。当たり前ですが、10組それぞれ違う夫婦であり、それは外見の問題とも関係ないなと、改めて実感しました。ただ、みなそこに感謝がある。ありがとうって恥ずかしくて言えないけれど、心の中でありがとうと思っているんだなと。それぞれの撮影でもそれを感じていたんだなということに気づきました」

冒頭に紹介した一文は、こんなことから生まれたのだ。

撮影/宮本直孝