あえて笑顔のない写真は、内面を浮き彫りにするため

今回の写真展で、「笑顔の写真ではないんですね」という質問をされることが意外と多かったと宮本さんは話す。確かに、モデルとして登場した夫婦の写真は、すべて笑顔ではない。

年齢も疾患もさまざま。唯一、笑顔なしの表情で撮影をしている。撮影/宮本直孝

「多くの人は笑顔の写真がいい写真と思いがちです。もちろん、そこに真実の喜びや幸せがみえることもあります。ですが、その人の深い部分がみえにくくなってしまうことが多い。また、自然な笑顔の表情を切り取って撮影したとしても、そこに撮る側の意図が入り込んでしまう。幸せ感などの意味をこちら側が選び取ってしまうことになってしまうと思うんですね。

ありがちなイメージや多くの人が求めるだろうイメージではなく、被写体の本質を撮影したかったので、あえて笑顔なしで、というオーダーをしています。これは、今回の撮影だけでなく、前回のダウン症の子供とその母親の撮影のときも、難民のときも基本は同じです」

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笑顔をなくしても、10組の夫婦からは、不思議と何かが見えてくる。撮影中にもそんな感覚が何度もあったと宮本さんは言う。

「脊髄性筋萎縮症で介助が必要な女性とその旦那さんを撮影したときでした。30kg台の体で出産されたという彼女は車椅子だったのですが、その隣に旦那さんがスっと寄り添った途端、目の表情がハッとするほど変わったんですね。なんというか、この方はいろんなことを決意されてきたんだな、ということが表情で読み取れた気がしました。でも、これはあくまでも自分が感じた感覚なので、もしかしたら違うかもしれませんし、またほかの方は違う感想を持たれるかもしれない。でも、それでいいと思うんです。こう見て欲しいという断定はしていないので」

脊髄性筋萎縮症の妻と夫。夫の瞳に決意を感じたと宮本さん。撮影/宮本直孝