「女が生きやすい社会は、男も生きやすい」フランスの元大臣の教え

彼女が私に語ったこと
髙崎 順子 プロフィール

そのような社会では、国民が声を上げることは簡単ではない。社会的に優位にあるはずの男性ですら、権威を持つ強者の前では従順を強いられ、権利の主張がはばかられるのだから。いわんや女性をや……そこに、日本で男女格差の是正が進まない理由があるのではないかと、議員は指摘する。

「フランスは日本の参考にならない」というショッキングな言い方で、議員が伝えようとしたのは、そうした日本の問題構造だったのだ。

 

女性が生きやすくなれば、男性も生きやすくなる

そんな日本で、男女格差を是正していくことはできるのだろうか。半ば縋るような口調になってしまった筆者に、議員はもちろん!と明るい声で返答した。

「構造は複雑でも、それに合ったやり方をすればいいのですから。それにそういう日本だからこそ、女性の権利の向上が、男性にも分かりやすく利益をもたらす、とも言えます。その一例に、女性の高等教育が挙げられます」

日本では、高等教育で大きな男女格差のある実態が確認されている( 参考資料:JRIレビュー2018 Vol.5, No.56「女性の活躍推進に向けた高等教育の課題」池本美香著)。教育の格差は男女の就業・給与格差に直結するが、それは女性の貧困だけではなく、経済的な責任が男性に偏る、という社会の不安定要因にも繋がる。世帯の稼ぎ手が父親一人しかいない場合、彼が失業すれば、一家もろとも路頭に迷ってしまうからだ。

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「フランスでは1960年代から男女共学が広がり、1975年には幼稚園から高等教育機関まで、全公立校で男女共学を義務とする法律が施行されました。高等教育機関に女生徒が急増したのはそれからです。女性への教育の充実を、女性自身だけではなく、国も望んだのですね。

その後押しとなったのは、人権的な理念より、経済的な要請でした。経済成長のためには女性にも仕事を持ってお金を稼ぎ、消費してもらう必要があった。学歴があればより良い仕事に就ける、だから女性にも学歴を、という論理です」

女性が収入を得られるようになったことで、かつて男性が多く担っていた経済的な負担は、必然的に軽減された。現在のフランスの世帯はほぼ男女共働きで、3歳以下の乳幼児を持つ母親でも、就業率は約8割だ。