「女が生きやすい社会は、男も生きやすい」フランスの元大臣の教え

彼女が私に語ったこと
髙崎 順子 プロフィール

また、筆者がフランスの女性政治家にヒントを求めた理由はもう一つある。フランス社会はそう遠くない昔まで、日本と似た「男は外で仕事・女は内で家事育児」の性別分業で回っていたからだ。

例えば驚くべきことに、妻が夫の許可なく就労できるようになったのは1965年と、ほんの50年ほど前のこと。世界経済会議が発表する、男女格差の指標「グローバルジェンダーギャップ報告」のランキングでも、初回の2006年でフランスは115カ国中70位と、欧州先進国では下位に位置していた。

それが2013年には136カ国中45位、昨年は149カ国中12位と急激にランクを駆け上がった。北欧諸国の大先輩とは違い、「少し前まで遅れていた国」だからこそ、日本にとってヒントがあるのでは、と考えたわけである。

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フランスは、日本の参考にならない?

フランス上院に面する議員室に迎えてくれたロシニョール氏は、穏やかな物腰ながら、強い意志を感じさせるグレーの瞳が印象的な人物だ。挨拶に続き、取材意図を説明したのち、議員は開口一番、こう言った。

「フランスの政治は、本当に、日本の参考になるでしょうか?」

せっかく来てくださったけれど、と、丁寧に前置きされたのち、取材の意義そのものを問われてしまったのだ。筆者は動揺を抑えて一呼吸おき、「どういう意味でしょう」と訊いてみる。私ごときが日本社会を語るのも僭越ですが……そう再び前置きをして、議員は語った。

「大臣時代、家族政策に関して日本と接する機会を多く持ちました。今年の春には日本の参議院を訪問し、議員の方々とパリテ(政治参加の男女同数原則)についても話しています。その中で感じたのは、日本における男女格差の構造は、フランスと違う形をしており、しかも強固だ、ということです」

ロシニョール氏はこう続ける。

「フランスでは、男性の人権がある程度確立しています。なので男女格差問題も、『男性と同じ権利を女性に与える』という考え方で推進すればいい。でも日本はどうでしょう? まず水準点となるべき男性の人権が、確立されているでしょうか。日本では、社会的な権威のある男性とない男性の間で、大きな差があるように見えます。そして女性はさらに権利を制限されている。まず男性間、そして男女間と、格差が二重構造になっているように思えるのです」