〔PHOTO〕gettyimages

米中冷戦、そろそろ「詰みつつある」といえる理由

中国当局はどう出るつもりか

「制裁関税撤廃」のメリット

世界の株式市場を混乱させている米中問題だが、現状は米中ともに制裁関税の緩和、ないしは撤廃に向けて妥協点を探る展開のようだ。もっとも、「交渉ゲーム」は騙し合いの側面もあるので、両国がすんなりと妥協点をみいだすわけではないだろうが。

確かに、この「制裁関税の撤廃」は米中双方にメリットがある。

米国側からみれば、中国は農産物等の一次産品の輸出先として無視できないくらい大きな国である。日米貿易協定によって日本が米国からの農産物の輸入を多少増やしたところで中国向け輸出の減少はカバーできない。

なによりトランプ大統領にとっては、来年の大統領選に向けて、農産物の輸出を回復させなければ、共和党の支持基盤である中西部、南部の得票を落とすことにもなりかねない。

〔PHOTO〕gettyimages

一方、中国にとっても米国が重要な輸出相手であることは言うまでもない。だが、より深刻なのは、米国からの輸入の激減である。

現在、中国では、生産者物価の低下と消費者物価の上昇という「インフレ率の分断」が発生している。9月時点で中国の生産者物価は前年比で1.2%の低下となっている。中国の生産者物価は月を追う毎に低下幅が拡大しているが、この生産者物価の低下は主に製品輸出の減少による製造業部門の需要低迷によるものである。

 

一方、消費者物価は9月時点で前年比3%の上昇となっており、上昇幅はじりじりと拡大している。この消費者物価の上昇は食品価格の高騰によるものである(食品価各は9月時点で前年比11.2%の上昇)。

豚コレラの影響で豚肉の供給が激減していることに加え、代替品需要として鶏肉等の価格が高騰していることが主因とされているが、米国からの輸入依存度が高い飼料の高騰も影響を与えている可能性が高い。

中国には雇用統計が存在しないため推測の域を出ないが、生産者物価の低下は企業のマージンの減少へと波及し、これは、最終的に雇用調整から中国国民の所得環境を悪化させるだろう。

つまり、このままでは、中国経済は、所得環境の悪化と同時に生活コストの上昇に見舞われる懸念がある。そして、これは、消費の減速を通じて、さらなる景気悪化につながると考えられる。

2019年7-9月期の中国の実質GDP成長率は前年比で6.0%まで減速している。「6%成長」といえば、一見、高成長のように思えるが、1人当たりGDPの水準が低い新興国がこの程度の成長率を実現するのはむしろ当たり前のことだ。

逆に新興国の段階で成長率があまりに低い国では社会不安の増大から治安が悪化し、政治体制も不安定化する。中国の政策当局は、長年7%成長を「死守すべき最低限の防衛ライン」とみなしてきたといわれているが、これは、実質経済成長率が7%を下回ってくると国民が日々の生活に不満を持ち、治安悪化などの社会不安が高まる懸念が増大するという意味である。

〔PHOTO〕gettyimages

中国は当局による情報統制が強固なので、社会不安や暴動などが中国全土でどの程度発生しているか、実態は定かではないが、中国事情に詳しい論者の中には各地でかなりの数の暴動が起こっているとする人も少なからず存在する。

それが事実であれば、このまま中国の経済成長率の減速が止まらなければ、中国経済の先行きが心配という話どころか、統治システムの維持も難しくなってしまうかもしれない。その意味でも、制裁関税の撤廃は、むしろ中国側にこそ大きなメリットがあると考える。

 
この続きは、プレミアム会員になるとご覧いただけます。
現代ビジネスプレミアム会員になれば、
過去の記事がすべて読み放題!
無料1ヶ月お試しキャンペーン実施中
すでに会員の方はこちら