アメリカの「日本は思いやり予算を4倍払え」要求は根本的におかしい

むしろ利益を得ているのは米軍なのだから
半田 滋 プロフィール

日米安保条約は第5条で米国に「日本防衛の義務」を課す一方で、第6条で日本に「米軍への基地提供義務」を課しており、トランプ氏の認識とは異なり、双務性を帯びた条約となっている。第5条には「自国の憲法上の規定及び手続に従つて共通の危険に対処する」とあり、米国による日本防衛は無条件発動ではないとの解釈もできるが、本稿ではこの問題には触れない。

この条約のどこにも「『思いやり予算』が必要」と読める規定はないものの、1960年代から70年代にかけて高度成長を遂げた日本側が、財政困難に直面していた米側に対し「思いやりの立場で対処すべき」(当時の金丸信防衛庁長官)として、78年から米軍駐留経費の一部負担を始めた。

これにより、米軍は日本の施設・区域ばかりでなく、日本のカネも手に入れることになった。

 

困るのはむしろ米国

ただ、米軍は太平洋戦争直後の占領期から一貫して、日本の基地を便利に利用してきた。とりわけ冷戦後は、出撃基地兼後方支援基地として米国の世界戦略に欠かせない重要拠点となっている。米軍の日本駐留の基盤が揺らげば、困るのはむしろ米国のほうなのだ。

例えば、神奈川県の横須賀基地は、米海軍第7艦隊の事実上の母港である。原子力空母「ロナルド・レーガン」をはじめ、旗艦「ブルー・リッジ」、イージス巡洋艦・駆逐艦など合計13隻の戦闘艦艇が前方配備されている。

旧日本海軍の横須賀海軍工廠をそっくり引き継いだことから、海外で唯一、大型艦艇の本格修理ができるドライ・ドックを備え、日本人の熟練技術者も数多く雇用されている。

横須賀基地に停泊する空母「ロナルド・レーガン」(Photo by gettyimages)

「ロナルド・レーガン」は毎年2回、インド洋や南シナ海における警戒監視のため、3ヵ月の長期航海の任務に就く。任務終了後、横須賀基地に戻って修理・補給を行い、乗員が休息を取るというローテーションが確立されている。

米海軍が横須賀基地を使わないと仮定すれば、「ロナルド・レーガン」はハワイか米本土の西海岸の海軍基地に拠点を移さざるを得ず、任務地であるインド洋や西太平洋へ進出するまでの時間的なロスが大きい。