中国・習近平「ウイグル人に容赦するな」極秘文書流出、衝撃の全貌

「弾圧マニュアル」も作られていた
奥山 真司 プロフィール

家族を人質にとる

さらに、ウイグル人に対する想定問答の中には、

「あなたの行動が模範的なものであれば、(訓練施設に入っている)親族の評価も高まるが、その逆の場合には悪影響が出る」

というあからさまな脅しと、背景にいわゆる「信用スコア」による評価システムがあることを匂わせるようなものも含まれているという。

このような「親族を人質にとる」という方法は、やや形は違うが、反北京的な民主化運動を展開したり、それを支持するような意見をSNS上に書きこんだ、海外留学中の漢族の学生たちに対しても(そしてもちろん、その他の少数民族出身の中国人にも)行われている。

これは俗に「タコ理論」(Kite Theory)と呼ばれるものである。オーストラリアにおける北京の浸透工作を暴き、同国でベストセラーとなった『サイレント・インベージョン』の著者であるチャールズスタート大学のクライブ・ハミルトン教授によれば、

〈中国は収監したいと思う人間を強制送還するための独自の手段を持っている。そして「自発的」に帰国するよう促すための方策があるのだ……逃亡犯は凧のようなものであり、身体は海外にいても、その糸は中国国内とつながっている。[中国警察]は家族や友人を通じて常に彼らを発見することができる〉(p.51)

というのだ。これは親族を拘束したり、その身の危険を匂わせることによる「自発的な引き戻し」の例に関する指摘だが、似たようなケースはカナダやアメリカでもニュースになっている。

より監視の厳しい国内で、北京が同じようなことをやっていないと考えるのは難しいだろう。

 

習近平が直接指示していた

2つ目の論点は、習近平が新疆ウイグル自治区の現状についてかなりの知識を持って語り、自ら弾圧政策を決定して指示を出していたことが、今回の報道で明白になった点だ。

報じられた文書の中身は、習近平が非公開の場で行った内部向けの「秘密演説」の内容がほぼ200ページと、全体のおよそ半分を占めている。しかも、公的には絶対に言えないような、かなり生々しい指示を現地政府の職員や官僚たちに対して伝えていたことが見てとれる。

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たとえばここで興味深いのは、2014年に行われた、初めてにして唯一の習近平の「現地入り」の様子が示されていることだ。

文書によると、習近平は2014年の4月に3泊4日のスケジュールで新疆ウイグル自治区を訪れているのだが、その滞在の最終日である30日には、ウルムチ郊外の駅でウイグル人の武闘派2人が自爆テロを起こして80人の負傷者と1人の死者が出ている。

また、その約1ヵ月後にはウルムチの野菜市場で爆弾テロが起こっており、94人の負傷者と少なくとも39人の死者が出ているのだ。

習近平は、このような同地区で頻発するテロと治安状態の悪化を踏まえて、メディアには取り上げられなかった「非公開スピーチ」を数多く行っていたことが文書の中から見てとれる。

その中には、今回の記事で話題になった「徹底的に無慈悲に抑え込め」という言葉もあり、「独裁のツールを使って、新疆ウイグル自治区のイスラム教過激派を根絶せよ」と指示していたという記述もある。

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